頓痴気号漂流記

一人で工廠を名乗る不届き者。

狂気の弁明#6

Twitter@soltrigger54

 

ー(兎爺)今回は狂気の座談会にて司会をお願いしました、朧灯さんをお呼びしてお話をお聞きして行こうと思います。朧灯さんよろしくお願いします

私をここから出せ!!!!

ー別に監獄でも牢獄でもなんでもないので…のんびりとお話をして頂きたいんですけど…もう大丈夫か出れますか?出ましたか?大丈夫ですか?

(鉄格子を揺らす音)

ーまあ捕まったままでもお話は聞けますので、折角ですし捕まえたままお話を始めていたいと思います、よろしくお願いします。

アイマスとの出会い

ー早速なんですけどアイマスとの出会いについてお話をお願いしてもよろしいでしょうか。

出会いそのものはアニマスをリアルタイムで見たところで、その後に一番大きかったのは親からスマートフォン買ってもらったことですね。当時僕の家にあったゲーム機といえばセガサターンのみ。ちょうどスマホを買ってもらったタイミングにモバマスが始まるということで、これならやれるわ、ってのが長い付き合いの始まりでした。

ー朧灯さんは、シンデレラや765AS以外にもたくさんのアイマスに触れられているとお聞きしていますけども、他のアイマスに触れるきっかけは何だったのでしょうか?

モバマスをやってた延長線上で、新しいタイトルが始まるんだったらとりあえずやってみるかって。イメージとしては、ポケモンをやっててポケモンの続編が出たんならとりあえずやるぞってなりますよね?それです。

ー本当にアイマスと共に歩んできたというようなことになっているんでしょうか?

そうですね…始めて2、3年ぐらいはなんだこのクソゲーやってらんねーとか言いながら入って抜けてを繰り返したので、皆勤賞ではないですが…。そうですね、まあ振り返ってみれば、いつのまにか誕生日にアイマスの新タイトルがローンチされるし、なんかここまできちゃったんだなーって気がしますね。

 

・担当や推しについて

ーそんな朧灯さんなんですけども担当について教えていただいてもよろしいでしょうか。

担当は13人で、シンデレラが9人、ミリオンが1人、シャニマスが一応3人です。人数少ないところから紹介してくと、ミリオンライブが田中琴葉一人だけ。でシャニが、西城樹里ちゃん、あとStraylightってくくりであるんですけど、基本的には僕は主体が愛依ちゃんなので、和泉愛依ちゃん。あとのnoctchillの樋口円香ちゃん…円香にちゃん付けは何かおかしい、いやシャニみんな違いますね、和泉愛依に西城樹里、樋口円香ですね。デレマスは五十音順にいくと、伊集院惠、沢田麻理菜、白雪千夜、高橋礼子、西川保奈美、ナターリア、早坂美玲、藤原肇、夢見りあむの9人ですね。

ー本当にたくさんいらっしゃいますね。昨年2月のアイマス学会では肇ちゃんのお話をされていたとおもうんですけど、肇ちゃんについて話を聞かせて頂いてもよろしいでしょうか

基本的に担当を選ぶ時はアイドルを全員ざっと見ていって、どこか引っかかった子をまずピックアップ。そしてその子の個人情報やセリフのテキストを見てさらに選んで…という作業を行うんです。特にモバマスの初期は各アイドルのテキスト量も少なかったし、声もなければイラストの幅もなかったのでカードが増えるたびにウィキ見たり、まとめサイトを漁ったりして情報を補完しながら担当を選んでいきましたね。

でも肇は、担当の中でもイレギュラーな子で。肇だけは夜桜小町っていうアイプロのカードが出て、それをを見た時に「あ、こいつは俺の担当にすべきだ」ってシャアがアムロに気づくニュータイプ的な表現みたいな感じで、一目見て思ったんですよ。

ー肇ちゃんの一番初めのノーマルカードは本当に作業服と言いますか田舎から出てきた感じですよね。

 そうなんですよ。他の子が割と今様の服装だったりする中で作務衣というチョイス。攻めてるな、シンデレラ。そんな気持ちでした。そんな彼女の中で一番印象に残っていたのが、アイドルになった動機で。陶芸家として私はこのままではいけないと思ったからアイドルになりに来ましたって言うんですよ。なかなかに珍しいんですけどアイドルをやった先まで見据えてる子ではありますかね。

普通ならアイドルになってこうしたいこうなりたいとアイドルたちは語ると思うんですけど、肇はあくまで備前焼を焼く上での一つの経験としてのアイドルというものがあるので、心に留まったんだと思います。

ーそうですね、確かにシンデレラのみならずアイドルをやることを目的とする子が多い中で、肇ちゃんは本当に珍しいパターンだなと思います。そんな朧灯さんですけども、推しっていらっしゃいますか?

 明確に意識したことがなかったですが。昨日たまたまそういう話になった時に担当じゃないけど好きな子だよって言われたので、それに則るとシンデレラの星輝子はぶっちぎりで、あと宮本フレデリカですね。

ー輝子ちゃんというと、昨年二月の発表でもトリを飾っていたアイドルですけども。

 僕にとってはかなり大きいウェイトを持っているアイドルですね。

ー大きいウェイトとはどのようなものなんですか?

 彼女はまず一個、それまでのアイマスにないキャラクター性を持っていて、一枚のカードでそれの両面を見せたところが大きくて。15歳142センチの35キロだったかな、すんごいガリガリの15歳で。本当にお前大丈夫なの?っていう。それにぼっちを自称するって...って感じだったのが、2枚重ねて覚醒した後にはV系バンドかっていうメイクと衣装だし、メロイックサインやってヒャッハー言ってる。???っていう。それまでの方向でアイマスでメタルっていなかったと思うんですね。シンデレラはその他にもカリスマギャルだったりとかとなかなか当時希少なキャラクターもいたんですけど、特に目を引いたんですね。そんな子が地元が一緒だと。そこで親近感がまず湧いたんですね。そうしてテキストを読み進めていって、ぼっちに共感を持ったってのもありました。当時僕の環境はそういう趣味にあたりがきつかったですし。

その後に彼女は割と早々に声を曲をもらいライブに出るようになって。対して僕の担当はそこまですぐ大きくなれなかった。あそこまで個性が尖っていても、あそこまで輝いてライブですげーパフォーマンスができるようなアイドルになったんだから、うちの子達も引けを取らないはずだし、ああいうふうになって欲しいっていう思いが彼女を見てできていったところがありますね。

それにモバマスって、課金しなきゃカードは引けないし、そもそもガシャにうちの担当出てくれないし。その中で彼女は少なくとも僕の知ってる中で一番身近で、一番輝いてステージに立ってたところがあって。さっき言ったような気持ちになっていたら、まあ星輝子はあいかわらず、紅っていう難題をジュエリーズでさらっとこなしていて。メタルって言ったらアイマスは星輝子だなっていう路線が確立してました。あそこまで尖って、あそこまで周りに認めてもらえたら俺も嬉しいな担当だったら嬉しいなってその姿を影を追い求めてかれこれもう8年とか9年とか経つので。彼女がいなかったら僕は今アイマス続けてませんし、彼女がいなければたぶんここまで自分の担当に躍起になったりとか、自分の担当について深く考え巡らせたりとかありませんでしたし、アイマスについて深く考えたりとかしなかったと思います。

 ーなるほど輝子ちゃんの個性に注目されたのですね。ちなみになんですけどフレちゃんはどうなんでしょうか?

 僕がああいう性格の人間が大好きなだけ。

 ー人間として好きであったと。

 顔面とかは正直タイプじゃないです。傍から見て勝手にブーストかけたりとかそういう立ち位置でいたいので。Pよりも悪友でありたい。

ーなるほど、Pじゃなくて近所のおっちゃんとかそういう立ち位置なんですかね。

 同じ事務所の顔見知りのおじさん程度でいたいな、というのはフレちゃんが一番ですね。

ーそんな推しのお話を頂きましたが、担当さんと推しさんに明確な違いってありますか?

 輝子に関してはもう導入からしてなので僕の中では推しとか担当とかではなく神様なので僕にとって神様はそういうくくりに入れることが難しいんですけど。それ以外の子達について共通点として考えると、その子とそのPの関係性を見ていたい、と思う子達です(伝わりにくいけど、デュラララの赤林さんみたいな)。

ーとなると担当というものが逆にどういう風に捉えてらっしゃるのでしょうか

うーんと、一概にこう、ってものはないですね。というのも担当の中でもかなり担当した時期に差があるので。担当ごとにその理由ってのはありますが共通してこう、ってものはないかもしれません。あえていうなら「自ら傘を渡す」みたいなところですかね。

 

・発表要約

ーなるほど…ではここから話が変わっていくんですけども、今回朧灯さんをお呼びしたのは昨年二月の第二回アイマス学会in札幌での発表を聞いてのことでございました。そちらの発表について要約をお願いできますでしょうか。

 簡単に言うとデレマスは他のアイマスとは一線を画すので、そこを楽しもうぜ、ってお話です。

ーその違いというのは何でしょうか?

 なんだと思いますか?

ーいっぱいいることですか?

そうですね。いっぱいいるんですけどその中で声がついて活動してるって子になると何人に絞られますか?

ー半分くらいでしたっけ?80数人とかでしたっけ?

そうですね、87人に絞られてしまうところです。87という数字はアイマスコンテンツ内最多ですが、その裏には103人というまだその舞台に立てないアイドルがいるということにもなります。基本的にそういうのってネガティブに捉えられてしまうんです。でも、エンターテインメントをわざわざネガティブに捉えることは、僕はつまらないと思うので。楽しめるなら楽しんだものが勝ちだと思うし、そこでしかできない経験があるなら、そこでしかできないことをやった方が僕は面白いと思うので。そういう意味で、シンデレラの特異な点として自分たちの活動した後に声が付く、曲をもらう、てところでひとつ自分たちの努力とか前提を加味して、その声や出番などの喜びに浸れるというところが大きいと思います。

ーP達の努力というか、やってきたというものの成果が見えやすいということなんでしょうかね。

そうですね、あとは単純にPの方が下手すると役者よりキャラクターとの付き合いが長いというところです。

ーお話にあった肇ちゃんもまだ声が付いてから数年しか経っていませんもんね。そんな肇ちゃんと言いますとHNYを初め様々なライブで歌を披露してきましたが、実際に聴いてみてどうでした?

肇に関しては、僕は…alwaysは別の意味が入ってきてしまうんですが、ほかの部分に関しては長く見てきただけの知識と、彼女のスタンスやパフォーマンスには長い付き合いで予感があったので、そのとき僕は取り合えずガッツポーズをし、「これが藤原肇というアイドルなんだぜ、お前ら覚えて帰れよ」という気持ちでした。

ーとなると観客というより一般的な意味でのPとして目線が強いみたいですね。

そうですね。前提として、まだ彼女を担当して肇にボイスがなかった時間の方が長いので。その間に藤原肇って誰やねんっていう言葉や、藤原肇がうどんの人っていう二次創作(?)が公式に輸入されるさまも見ましたし、藤原肇ロリコン説が局所的に流れたのも目の当たりにしました。そういう「よくわからない作務衣の子」っていう印象から椎名先生達から曲をもらってそれを歌いこなすだけの人が演じる「備前焼の女の子」っていうところまでしっかりと像が固まって認知されたのが僕は嬉しいです。元々声がついていたら違うんでしょうが、そうじゃないので。俺はお前らに肇がすごい魅力的な女の子だと知らせるためにここまでやってきたんだって思ってるので。

 

・今後の展望

ーということでここまでお話をお聞きしてきたんですけども、今後その発表についてこんな風に膨らませていきたいとかこういう話をしてみたいっていう展望はございますか

とりあえず肇が他の声がついたアイドルたちが歩いてきた道を一通りたどりきったと思います。ソロ曲が出て、まあオンラインの舞台であるんですけど、初披露しオーディエンスを魅了したところが当時からの新たな歩みです。あの時は、声がついたところまでの体感しかお話しできてませんでした。確かその発表って最後に星輝子を引き合いに出して、あの大阪の会場で紅を歌って、聴衆を虜にした女の子と同じような活躍をしてほしいって言ってました。今はその願いがある意味叶った形になってます。だからその時にどんな風に思ったのかってことを新たにお話できる、と思っています。そうすると声が付いてない子から見ていくってところの面白さってのがまた少し、伝わるんじゃないかなって思ってます。それに、僕には今までで唯一のサプライズ方法で声がつき、HNYでソロ曲を披露した子も担当にいます。今度はその子の話だったり、肇との比較、という話をするかもしれません。

ーなるほど、肇ちゃんだけでなく美玲ちゃんの話をするかもしれないということですね。美玲ちゃんもHNYでソロ曲を披露してましたが、いかがでしたか。

基本的に映像のライヴでは、役者さんを役者さんとして見ることが多いんです。でも、Claw My Heartを歌ってる時だけは朝井彩加さんが10年後くらいの早坂美玲に見えたんです。朝井彩加さん28歳が早坂美玲14歳そのものに、ではないんですが、でももし美玲が大きくなったら。アイドルを続けて歳を重ねていったなら。こんな風になるのかな、こういうパフォーマンスを見せてくれるのかなって思ってました。

 

・犯行動機

ーまた機会が必ず来ると思いますのでその時にお話しいただきたいと思います。ということでお話をいただきましたけどもそもそも発表されたきっかけというのは何だったんでしょうか

この発表をした理由は3つです。

まず、これまでこういったイベントに参加してきて、アイドルのダイマって難しいなと思いまして。その中で何かオリジナリティを出そうとしたときに、ライブだったりで知り合ったPさんたちのことが頭に浮かんだんですね。いろんなPさんたちと交流するようになって2年弱で、いろんなアイドルのPさんと出会いました。その中で、まだ声がついてないアイドルの熱いPさんもいたんですよ。でも、ひたすら頑張るのって疲れるし、いつ実を結ぶかわからないのってすごく疲れるんです。だから、そういうPさんがこれからまだ諦めないでいるための材料として、一度僕がその道を通ってきたものとして何かできることはないかと思ってこの発表をしました。

それに、肇は声付きましたけど僕の担当にはまだ声も付いてない子もいます。最近は漫画で出番がもらえて、露出が増えた子もいますが、そうじゃない子もいます。そういう意味では自分の発奮材料でもあります。

最後に、シンデレラガールズに興味を持ってもらうことです。シンデレラガールズというコンテンツは「続けばいつか」と希望が持てるところがまだいいところだと思ういます。終わってしまったらそこまでなんですよ。終わってしまったら今の103人は「声がなかったアイドル」になるんですけど、続いてさえいてくれればまだ声がつくかもしれないと希望は持てるので。そのためにはまず多くの人に触ってもらうしかない。そんな意味ではシンデレラガールズダイマと換言しても差し支えないです。

 

・私的P観

ーでは最後に朧灯さんにとってのプロデューサー論についてお聞きしてもよろしいでしょうか。

プロデューサー論というよりは、どんなPでありたいかという話になるんですが。担当した女の子たちに、そのままでいいんだ、ここで俺が責任持つから好きなようにやりなさい、そして得た経験を糧にして自分を大きくしなさいという心情で僕は触れています。欠けてることも足りないことも全部、彼女たちの長所だし、個性です。そういったものを肯定し、時には修正しながらもそのまま歩んでいってほしい。ある意味僕が大人になって、そういう子達に出会う前の予行演習かもしれません。

ー個性を認めるだけじゃ難しいと思うんですが認めてもそれこそ大きくなれるって思った理由っていうのはやっぱり星輝子ちゃんが絡んでくるんでしょうか。

そうですね。輝子が補完してくれた部分もあります。突き抜ければ何事も素晴らしい才能になります。そこに時間をかければかけただけ、それはその子にとって武器になります。それは現実でもアイマスの世界でも同じだと思っています。でも時間をかけることを阻んでしまったら、その子には何も残りません。彼女たちが自分の好きなことに向かって進む中で得られることが彼女たちに必要だと思っているので。

それにあの子達の時間は止まってますが、アイドルは生涯やるものではないです。そんな彼女たちの貴重な時間を使うんですから、そこで何かしら彼女たちの人生に還元させなきゃいけないだろうな、って。

ーお話を聞いていると、アイドルのその先を見てるという印象があるんですけども、そういう自覚はあったりしますか。

ありますね。基本的にデレマスは将来を信じる、先を願うことで今に至るコンテンツだと思っています。加えて藤原肇を筆頭にうちの担当たちは何かしら欠けている部分や不安な部分があって。それが時を経て少しずつ学んだり成長して今に至る様子を見てきたので、今後さらにどう歩んで欲しいか、考えてしまう節はあります。

ーそういえば以前の座談会前後にお話させて頂いた際、アイドルは情報と捉えているという話を拝聴しましたが、そちらの真意についてお聞きしてもよろしいでしょうか?

シンデレラガールズでは、物語って結局個人で作るものなんですよね。当初のモバマスにストーリー性があるのってぷちエピソードの6編しかなくて。それ以外はセリフとしてのテキスト情報だけ。となった時にアイドルのどこを好きなんだろうと思うと、情報をもとにした己の解釈しかないんですよね。

だから他の方のお話を聞いている時も、この人は担当を通して何を見ているんだろう、担当に何を求めているんだろう、ということを見定めようとしたりします。私にとってはアイドル以上にその担当Pたちの文脈だったり、見ている世界が興味深いです。

最近、ライブとかの感想で結構聞く話ですが、曲を聴いていてなんかこの曲のこの表情で歌っていた裏側にはこういうコミュのストーリーがあって…、ってなってくるとそれってお前ら楽しんでるのってパフォーマンスじゃなくて文脈だよねって。この演者さんのこのパフォーマンスがすごい、だったらライブの感想だと思うんです。けど、その後にこのコミュの流れがこういうことがあったから彼女がこういう風に歌うから泣けるんだって言われたら。それは初見の人に伝わらないので、それは情報で見てる、ってことだと思います。

テキスト情報をもとに何かを伝えようとすると、個人の感情が割と邪魔になることが多いんです。やっぱり自分が感じたことを他者が感じるかというとそうでもなくて。まぁテキストとテキストとを繋ぐ糊が個人の感情なんで、その糊が違ったら、結果作れたものも違うので。俺の話がうまく伝わらんなーってなったらやっぱそれを排して、みんなが触れる情報に頼るしかなくて。○○の情報があって、〜なことが読み取れるよね、だからこの子はこうなんだ、というのは情報の読み取りでしかなく、そこにあるのは真偽のわからないカケラしかないんですよ。楽曲なり、声なり、アニメーションなりが蓄積されて多くあれば、それも収束して一定の方向に固まりますが、シンデレラはそれすら不十分なアイドルがいっぱいいるので。そういう経緯の中で、下手すると名前を覚えられてすらいないアイドルについて、私の感情を伴った物語を話す、というのは僕には無理でした。そんなことを経て、僕はこの子達を情報としてみることしか無理です、一つの有機体として彼女たちを捉えることはできません、と。今もまだアイドルを個人として見ることには、至れてません。

ーあくまでも彼女たちが持ってるステータスとか台詞とかそういうところで見ること。

モバマス当初ってぷちデレラのステータスで見てこの子多分これが得意なんだろうなーとか言ってたんですよ。その状況を僕は情報で判断してるとしか言えないので。声聞いてんなら分かりますけど、数字が高いからってお前人に対する扱いじゃねえだろって。そういうことを普通にモバマス初期からやってたので無理ですね、人としてみるって。それが染み付いてしまっているので。

 

ー(温泉卿)情報をアイドルの主な要素とする思想が、ライブで役者さんは役者さんとしか見れないっていう発言の方にも繋がっていくという認識で大丈夫ですか?

ライブではっていうより、円盤やライブヴューイングで見る場合は、です。

ーなるほど

現地だと僕の目が悪いので個人衣装を着られた瞬間にその子に見えます。

ーそれはもうなんか認識の問題ではなくて…

服がその子のもので、声もその子なら、もう認識としてその子だろ、という。

ーわかりました。ちなみにその情報だと思っているって言うのはシンデレラに限らずっていう話で大丈夫ですか

そうですね情報ってところが正しいかわかんないですけど、シャニマスなんかもう完璧に物語なので。シャニマスには物語って意味である意味情報かもしれないです。形態は違うんですけど、僕がその世界の中に飛び込んでアイマスのゲームのロールプレイみたいなことしてるかと聞かれたら僕をそういうことはしないで、ちょっと離れたところでそれを見てこういうことなんだな、と。

ーシンデレラはやはり特別に情報ぽくて、他は情報かどうかはわからないけどとりあえず一歩引いてるよという認識ですかね。

そうですね情報だと思うんですけど、如何せんミリオンライブにちゃんと触れられてないのがあるので。僕にとって765は完成された場所、到達点、目標みたいなところがあったので。一応琴葉が担当ですけどその他のアイドルに習熟しきれていないです。シャニマスは塊の情報をぶつけられて、その中で何を精査するかというのが肝なので。まぁライターとの勝負です。アイドルではなく。例えば言葉尻でこの助詞を使ってるから、心情や行動はこんなんだろうっていう。現代文を解いてる感じですね。

ーなるほど。わかりました。以上です。

ー(Lotus)私はマジで何も言えないことが判明したのでちょっと黙ってましたが、ひとつだけ気になったことをいいですか。アイドルへの接し方の問題なんですけど、自分から道を指し示すというよりは基本的にそのやりたいこととか目指したい場所を聞いてそこに一緒に行く手伝いをするみたいな感じなんですかね。その自分から引っ張ることが少ない印象受けたんですけど。

そうですね。時と場合によります。例えばある担当向けの仕事があってそれに向かって行くなら全然いいんですけど、その子向けじゃないけど、これやった方が絶対に繋がるものがある、のであれば、やらせようとします。そして迷ってるなら手を差し伸べます。けど、手を差し伸べたけど、取るのはお前の自由よ、それはお前が決めなさい、任せるからって僕は言います。樋口が似たこと言ってるんですが、「お前が感じた感情もお前の選択も全てお前だけのものだから」っていうことです。

ーアイドルへの呼び方の敬称の差とかありますか

気持ち悪くないかどうかです。

ーありがとうございます。多分これ以上私から出来る質問がないと思います。

 

・取材後記

朧灯さんご本人のお話をしっかりお聞きしてきましたが、濃く長いアイマス生活とアイドル達への深い想いを感じる事が出来ました。今までとは違う「ヤバさ」を感じるようなインタビューになったのでは無いでしょうか。

  

次回は藤河ひとひさんにお話をお聞きします。公開は【2/13】予定です!

 

(文責:兎爺)

 

 

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狂気の弁明#5

学会発表者の狂気に迫るインタビュー、第五回はミリマスに関する怪文書作成でも名高いかめぴさんに来ていただきました。
Twitter@kamepppppppp 
Pixiv: https://www.pixiv.net/users/1094497

 

アイマスとの出会い

―(Lotus)まずはアイマスとの出会いについて教えてください。

私のアイドルマスターとの出会いはアニマスです。アニマスでASを一通り見た中で雪歩を気に入りました。そして雪歩が登場するゲームってことで、GREEアイドルマスターアイドルマスターミリオンライブ!愛称はグリマス)を始めて、そこからミリマスにずっとハマり続けている感じですね。

―なるほど、GREEに入ってからの気になったキャラクターの変遷など教えていただけますか。

それはよく覚えています。私がGREEに入ったタイミングでアイドル学園文化祭というイベントをやっていて、その時の完走がまつりでした。雪歩を入れたかったのもあり、雪歩・まつり・桃子でビジュアルユニットを組んでいました。
その半年後くらいに百合子が完走のアイドル紅白歌祭りというイベントがあって、その百合子のウィンドエレメントという、百合子が夢心地でステージ上で踊っているカードがあるんですけど、そのカードが本当に好きなんです。そこから百合子が気になっていって、ビジュアルのユニットに百合子を入れるようになりました。ビジュアル以外のボーカルやダンスのユニットも作っていくうちに、他の子も徐々に触れていって、最終的に箱推しになったという変遷かなと思います。

 

・担当や推しについて

―箱推しとのことですが、担当を訊かれたときは誰を挙げる感じになるでしょうか。

Pの集まり等で、もし訊かれたら七尾百合子ですと答えるようにしています。

―ふむ、では担当と推しという表現で、推しに関しては765プロ、765シアター全員っていう感じなんでしょうか。

そうですね、推しについても765プロシアターの全員と考えて頂ければ良いです。ですが、「推し」と「好き」の境界が曖昧かもしれないです。「担当」が「アイドルを担当しているプロデューサー」という視点で、「推し」が「ファン」や「お客さん」としてそのアイドルが好きっていう関係だとすると、私は全アイドルが推しですね。そうなると推しは誰になるんだろうな。プロデューサーとお客さんの視点の違いが面白いアイドルでいうと望月杏奈と篠宮可憐だと思いますね。

―確かに見え方が結構違ってきますね。

そうですね。プロデューサーから見た杏奈とか可憐と、お客さんから見た杏奈と可憐は全然違っていて、そこは面白いなと思います。

―ありがとうございます。お話を伺った印象なのですが、視点が移動するんですかね。

ん?

―えっと、かめぴさんがプロデューサーの時とファンの時があるという認識でよろしいでしょうか。

そうですね。プロデューサーの時もあれば、ファンとしてアイドルを見る時もあります。

 

・発表の要約

―なるほど、ありがとうございます。ではアイマス学会での発表について質問していきたいのですが、まず第一回札幌での発表について教えていただきたいです。

はい。第一回のアイマス学会の方ではミリオンライブ全般のキャラクターの魅力と、その中で七尾百合子をピックアップして、七尾百合子の魅力を発表しました。現地参加が叶わなかったので、ゆみゆみPさんに代読をお願いしました。

―ありがとうございます。では次にオンラインアイマス学会での紬の話をお願いします。

オンラインアイマス学会では、白石紬のソロ曲である「瑠璃色金魚と花菖蒲」の歌詞から紬の過去を考えさせていただいて、紬のアイドル観や、紬にとっての「花菖蒲」とは何かを考えました。結論として、紬にとっての「花菖蒲」がアイドルという概念ではなく、一個人のアイドルを指すのではないかという結論に持っていき、そこから見えた妄想をお話させていただきました。

―ありがとうございます。ちょっと気になった所があるんですけど、

はい。

アイマス学会とは直接は関係ないのですがかめぴさん自身で発行されている物の中にロコの液体、液体ロコについての一考察みたいなものがあって、それが凄く気になったんですけど、それは…何?

何、何か(笑)。液状化ロコの各画分におけるロコ等量の測定と効率的な復元方法に関する研究ですよね。

―あ、それですそれです。

あれは確か夏の暑い時期に、こんなに暑かったらきっとロコは溶けてるだろうなと思ったのが切っ掛けですね。それで「でもロコが溶けたらアイドルやっていけないし治さなきゃ、冷やして元に戻してあげなきゃ」みたいなことを妄想して、でもロコの復元方法どうしようみたいな事をTwitterで呟いているうちに、これは形になりそうだなと思ったのでコピー本として出させていただきました。

 

・今後の展望

―なるほど、ありがとうございます。続いて今後の展望についてお伺いしていきたいと思います。まず百合子の話についてですけど、これはどちらかというと「みんなも創作していこうぜ」みたいな内容に思われるのですが。

あ、そうですね。

―その後こういうのをやろうよって働きかけみたいなことはされました?

そうですね、妄想しようよという働きかけは常にtwitterではやっているつもりです。百合子というか全アイドルの魅力はもっと掘り下げたいと常々思ってはいるんですが、特定のアイドルではなく思いついた端から掘り下げていこうと思っています。

先ほどの紬の方の話もそうなんですけど、別に紬の専門家になりたいというわけではなくて、広く浅く続けていこうと思います。アイマス学会の発表物としての今後は今のところは考えてないですね。もし何か妄想が思いついて、タイミングが合えば参加させて頂ければと思います。

―という事はその時に思いつくものが別のアイドルになる可能性もあるという事ですか?

はい、そうです。

―かめぴさんは過去に「アイドルになる瞬間」というテーマで39人分のSSを書いて同人誌として発行されていますね。それも広く浅くを続けていった結果なのでしょうか。

そうですね。あの39人SSは確か、木下ひなたの学校生活を妄想していたのが切っ掛けだと思います。そこで、ひなたが同級生にアイドルであることを打ち明ける瞬間が、ひなたがアイドルになる瞬間なんじゃないか、と思ったんです。

その時に「これ他の子でも面白そうだな」と思って、他の子も考え始めた結果39人分考えたくなってしまいました。一通り書いた後に、やっぱり言葉だけで説明しきれないなと感じて、SSも書かせて頂いたという流れですね。必要に駆られたから書いたという感じです。

―なるほど、ありがとうございます。えっと、最後に液状化ロコについての今後の展望というか、まずそれ以前にエレナと土壌のやつもありますよね?

あー、はい。

―これらの分野って先ほど伺った妄想とはちょっとベクトルの違うもの、と言っていいのでしょうか。そのようなものを感じるんですが、この分野に関して今後練っている内容とかありますか。

この分野では、「日本七尾百合子学会誌」という同人誌を出させていただいたんですけれど、その時は「百合子の生態に迫る」というテーマで書かせて頂きました。なので、生態学以外の観点からも百合子を見たりはしてみたいなとは思っています。液状化ロコに関しても、ISFという同人誌のイベントがあって、そこに持っていくものが何か欲しいなと思った時に、丁度良い具合にとろけたロコが転がっていたので書いたという感じです。特に展望というものは無いですね。思いつきだったり、必要に駆られて書いたりといった具合です。

―環境要因って感じですかね。

そうかもしれないですね。

 

・犯行動機

―では気になる犯行動機についてですけど、百合子の作品に関しては犯行動機と言うかまあ知ってもらいたかったというのがメインなんでしょうか。

そうですね。まず、アイマス学会をtwiplaで初めて見まして、推しのプレゼンをする大会なのかなって思っていました。私は箱推しなので、他の人が推しのプレゼンをするなら、折角だからアイドルだけじゃなくて「ミリオンライブ」を推そうと思いました。その中で、担当についてもプレゼンしないといけないのかなと思ったので、じゃあ百合子かなという感じで発表させていただきました。アイマス学会に限らず、面白い会があったら賑やかしには協力したいと思っています。

―ありがとうございます。えっと、紬の発表に関してはオンラインアイマス学会での発表となりましたが、ここで出そうと思った心境の変化とか、もしくはそもそも紬について考えたかった動機とかいう物はありますか。

動機は……。曲について考えたくなる時とかは、本当に「たまたまその曲を聴いた」とかなんですよね。歌詞をもう一度見直してみたら新しい発見があったりして。今回のオンラインアイマス学会については、たまたま瑠璃色金魚と花菖蒲の歌詞について考えてブログとかに整理していたタイミングで、オンラインで発表する機会がありそうだったので、丁度良いから発表しようという感じですね。

―なるほど。最後にロコの動機についてなんですけど、これはやはり気になったからなんですかね。

はい。んー、まあさっき言った通り真夏でめちゃくちゃ暑くて、私自身が溶けていたからなんですかね、わかんないです。「なんでロコだったのか」と聞かれるとそれは難しいです。じゃあ他の子だったらいいのかとか、他の子はどうなんだとか言われると、そこは説明できないです。「たまたまロコで思いついたから」が一番良い説明で、たまたま私が見た光景でロコが溶けてただけなので。

―これはインタビューに実際載せるかわかんないんですが一応聞いといていいですか。

はい

―ロコナイズド活性って、なに?なんですかあれ?

あはは、いやあれは……、改めて説明すると恥ずかしいんですけど。私個人の考えとして、ロコは世界を鮮やかにしていきたい願望がある子だなぁと思っています。もちろんモノクロはモノクロですごい綺麗なものですし、それも立派なアートだとロコは認識してると思いますが、「いろんな色がある状態」をロコは大切にしてるんじゃないかなって感じています。
それで、ロコが元気であればあるほど、より創造的な活力があればあるほど、ロコの世界はより色鮮やかになるんじゃないかなと思い、その活性を定量的に評価する方法ないかなと妄想して「ロコナイズド活性」というものを書かせてもらいました。ロコの感覚的なものなので難しいなとは思っていたのですが、白と黒のモノクロの物体があった時に、それにロコが色を加える力があったらいいなと妄想して、その力を測定機器で測れるようにしたのが「ロコナイズド活性」の測定試験とさせて頂きました。すべて妄想です。

―質問なんですが、なんで科学の手法を使おうと思ったのですか?科学の書き方をしようと思ったのかというか…

科学はサイエンスの方ですよね、ケミカルではなくて。

―はい、広義の科学ですね。

単純に私が好きだからですかね。私がああいうのが好きな人間で、かつそういうものに触れる機会もあったので、「書きたい」のと「書ける」からですね。

―元々理系の学問を修められた方なんですかね。

そうですね、理系です。

 

・私的P観

―では最後になりますが、私的P観、私的アイマス観について伺っていこうと思います。先ほど担当や推しについての所でも軽く聞きましたが、アイマスに対しての自分の立場が変動するのでしょうか。

まあ、そうなるんですかね。変わるし、変えるしですかね。

―それは自分から変えることも出来るし環境によっても変わる。

日常生活の中で変わっちゃうこともありますし、SSを書きたい時は、変えようと頑張ったりはしますね。

―その環境によって変わらされるというか自分の意思に反して自然と変わっているときの具体例とかあったりしますか?こういう場合にこう考えてるときとかあるよ、みたいな。

基本的に「変わっちゃう」のはもう本当に何でもかんでもです。「眠い」だけで変わることもあります。眠いなってなった時に、「でも田中琴葉だったら頑張って起きてるんだろうな」と思ったりとか、何か美味しいものを食べてるときに「これ凄い美味しいから、可奈ちゃんが食べたらきっといい顔をするんだろうな」とか、そういう……これで変わってる例としてあってます?

―私は凄い合ってると思います。なんというか、日常がアイマスに侵食されている感というか。

侵食されてるのかこっちに来てるのかわからないですけどね。

―そこも聞いてみたかったんですよね。それこそ先ほど挙げさせてもらったロコとエレナのあのペーパーについてなんですけど、参考文献・引用文として実際に存在する論文というのでしょうか、J-STAGEとかで調べたら出てくる論文と私たちがアイマスを知る立場となるCDだったり或いはゲームだったりそういう物と完全に創作の杏奈とか亜利沙とかが書いた論文が混在してたじゃないですか。

そうですね。

―あれはどの立場に立って、と言ったら難しい質問になりますが。あれはアイマスの世界で実験をしてこちら側の参考文献を引っ張っているような形なのか、こちら側で思考実験をしてあちら側の参考文献を引っ張ってきてるようなイメージなのかっていう質問をするとどっちだと答えますか?

向こうの世界では、こっちの論文を引っ張ってくる必要ないじゃないですか。

―そうですね、確かに。

確かWHOの論文を引用していたと思うんですけど、向こうの世界にも多分WHOあるじゃないですか。そして、向こうの世界にもきっとJ-STAGEはあるはずなんですよ。という事は、J-STAGEに美咲ちゃんが論文書いていたら、美咲ちゃんの論文があるんですよ。

―という事はかめぴさんの中にあるアイマス世界っていうのは、こちら側の世界の隣にあるというか同種、似た種のものでアイマス関係者以外は私たちのコピーのような、ほとんど同様のシステムがあるっていう感覚でいいんですかね。

そうだと思いますよ。だってアイマスのアイドルはそっちの世界に生活してるわけですから。自宅もあれば、劇場に行くまでの交通網もありますし、なんならアイドルになる前の人生もそれぞれのアイドルであるわけです。そこは世界として存在してないといけないですし、私は創作をする時にそこにファンタジーを持ってこれるほどの技量はないので、私たちの世界をベースに考えてアイドル達が生活しているって考えます。
例えば、未来ちゃんは今日の朝御飯何食べたのかなとか、そういうリアルな生活が広がっている妄想をするのが楽しいっていう。私が楽しいからこう考えているだけなんで、こうあるべきとかじゃないですよ。

―かめぴさんがこう考えるというのがこのインタビューで一番大事ですから。もしかしてですが、あちら側の世界もアイマス世界と私がいま生きている現実世界が重ね合わせの状態になる感覚ってありますか。

重ね合わせってどういう物をいってますか。

―今お話を伺った中ではアイマス世界と私たちの住む世界が隣り合ってるという、同じ場にあるようなイメージだったんですね。で、先ほどかめぴさん自身がこっちにいたりあっちにいたりと視点が動くという話だったので、もしかして現実世界とアイマス世界に重なり合って見えている部分があるんじゃないかなっていう。

それはあるんじゃないですかね。別に家を一歩出たらその辺を志保ちゃんが歩いているかもしれないですし、可能性はゼロではない。ちょっと変なこと言っちゃってますかね。

―いえ、これはすごく面白い観点だと思います。実はこの企画の第一回のカットしてある部分で私も似たような事は言ってたんですけど、ちょっと違うんですよね。こう、アイマス世界を現実にとても近いものとしてとらえているプロデューサーの中でも私はアイドルがこちら側にいると考えているのではなくプロデューサーは私であるっていう感覚でアイマス世界がこちら側に侵入してきてるんですけど、どちらかというとかめぴさんはアイドル世界そのものが影響力の強いものでこちら側にもアイマス世界事態がくっついてきているような印象を受けました。

え、Lotusさんはじゃあ自分がプロデューサーとしてアイマス世界に行ってるようなイメージなんですか。

―はい。現実世界への侵食という目で見るとこれをアイドルに持って行ってあげたいなっていう感覚です。だから言ってみると自分から行ってるのかもしれません。あるいはリアルの友人に対してこの子やったらこうやってプロデュースしたら面白いだろうなって思うことはあります。

リアルの友人に対して?

―はい、男女問わず。もしこの人アイドルとして活動するんだったらこういう雰囲気でこうやったら絶対面白いだろうなという考えはたまに持ちます。

すごい、それはそれで私初めて聞きました。

―こういう人あんまいないと思いますよ、だからこそこの企画に呼ばれてるわけで。

面白いですね、でも結構SSとか書く人だったらこういう人多いんじゃないかなって勝手に思っていて、わたしはそんなに珍しい人間じゃないと思いますよ。

―現実性の高いアイドル達がいるって感じですかね。現実性というよりはこちら側性かな?

そういうのが凄く好きな人もいますから。例えばミリオンライブでトンチキなイベントがあったとして、それを実際にやるためにはどういう法律をクリアすればいいだろうとか考えてる人とかもいますし。

―もしかするとミリオンの風土が生んだというかミリオンがメインだったからこその視点もあるのかもしれないですね。

これに関しては、あると思いますね。ミリオンライブの二次創作に関しては「公式が最大手」だと思っています。公式がやりたいようにやっているのを見るのが凄く楽しいんです。特に今(収録当時)ミリシタでミリオン女学園というイベントやってますけど。

―やってますね。

GREE時代はイベントの始めに一枚絵が出るんですけど、それが20行ぐらいバーって設定が書いてあって、「これ開発した奴が書きたかっただけだろ」みたいな感じで笑いました。その時は50人だったんですけど、50人全員分設定が決められてて。

―設定好きな制作陣おるなぁ。

幻覚が見えてる同人作家が作るような設定で。そういうのを楽しんでる人たちが集まるっていう雰囲気はあるかもしれないですね。

―改めて、全くもって不思議なコンテンツですね...

 

―(温泉卿)先ほどかめぴさんの視点は現実世界からアイマス世界に移動しうると伺いましたが、アイマス世界でとるロールというのは何になりますか?

Pであることが多いとは思いますが、見たい妄想によってはファンだったり、アイドルだったりかなと思います。

―そのロールは自己の延長線上にありますか?

妄想の時は延長線上にあることが多いと思いますね。SSを書いたりする時はあまり自分を出したくないので出さないようにしたいですが、無意識に出ちゃってるかもしれないです。

―普段…というかTwitter上などの時はPですか?

わからないですね。Pだったりファンだったり、一般人だったり、松田亜利沙だったりします。

―状況によって変わるわけではなく、普段からロールは浮動しているんですね。

そうですね。ただ、Pであることが多い感覚はあります。Pじゃないと百合子のほっぺ引っ張れないので。

 

取材後記

途中(というか後半わりと)ただのファン化してインタビュー出来ていなかったような気がします(反省)。それはそうと、アイマスの現実性が高いPの中でも溶けたロコが視える方というのはなかなか稀有な存在ではないでしょうか。

 

次回のインタビューは朧灯さんに伺っていきます。公開は【01/30】予定です!

 

(文責:Lotus)

 

 

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狂気の弁明#4

学会発表者の狂気に迫るインタビュー、第四回はICMAS2020の主催者であるNestleさんに来ていただきました。
Twitter:@mhcp001 ブログ:https://mhcp0001.hatenablog.com/

 

アイマスとの出会い

―(Lotus)まず、アイマスと出会った時はどのようなものであったか教えてください

これは、降ってきたという言葉をよく使うのですけど、「アイドルマスター」という単語がパッと思い浮かんだ。その言葉だけをもとにしてインターネットで調べて、その時に「アイドルマスター SP」(以下SPとする)というゲームがPSP the Bestで出たということを知って買いに行った。その時偶々手に取ったのが「アイドルマスターミッシングムーン」でした。最初に如月千早をプロデュースしたのですが、なかなか…すごい難しい子なので…プロデュース全然できなくて、非常に申し訳ないのですけど、途中で諦めてしまって、あずささんで一度最後までプロデュースして、慣れてからもう一度千早をやって、千早を最後まで、優勝というところまで持っていくというのはやっています。
千早をプロデュースしていた時期に、モバゲーの中でアイマスのサービスが始まったのでそこからシンデレラガールズにはまりました。その後、音ゲーにはまり、アイマス音ゲーが出るぞとなったのでデレステとか...色んなアイドルマスターという深みに入っていった感じになります。

―ありがとうございます。ちなみに、今やっているゲームってモバマス、デレマス以外に他に何かありますか?

今だと、アイドルマスターシャイニーカラーズがかなり僕の中では力を入れてやっているというところはあります。

 

・担当や推しについて

―では、担当や推しについて。まず、担当は誰、推しは誰というのを教えてください。

担当はシンデレラガールズから北条加蓮、シャイニーカラーズから大崎甘奈と黛冬優子、で765プロダクションから如月千早の四人です。推しがシンデレラガールズから桐生つかさと佐藤心、シャイニーカラーズに関してはアルストロメリアとストレイライトが一応推しという風に言っているのですが、trueを取ってしまうと全員推しなので実質283プロダクション箱推しというところがあります。であとはミリオンで最近ちょっと所恵美ちゃんがかなり気になっていて、それも推しですね。

―担当と推しはどのように使い分けていたりしますか?

担当はその子の人生に責任を持てるか、というところを僕の中で基準においていて、そのくらいその子に対してひとつ特別な感情を抱いて、接することができるかというのが一つ基準です。で、推しは基本的に「好き」なんですが、好きになりがちなところとして、何かしらの形でアイドルかもしれないし、生き方みたいな所に、強い意識、意志みたいなものがあって、そこの意志に対して自分が共感できる、というのがひとつ大きな好き、推しになるときのポイントなのかな、という自己認識があります。

―ありがとうございます。ちょっと気になったのが担当として如月千早を挙げられていましたが、最初に触れたときは正直結構苦手だったのかな、という印象を受けたのですが。

そうですね、全然好きじゃなかったんですよね(笑)。もちろん難しかったんですよ、難しくて、やっぱりその当時慣れてなかったというのもあるので、「なんでこいつ服変えたらテンション下がるんだよ…」とかすごい思ったりしたんですけど、後からあずささんをプロデュースして慣れると、千早をやった時にもこういう風に動いたらいいんだということがわかってくる。それを乗り越えていくと、千早はこういう気持ちでアイドルというのをやろうとしている、とか、こういうことはいやなんだな、こういうことをやりたいんだな、というのが見えてくる、その行動指針が見えていくと、「そりゃあ確かにあの時こういうことやったら怒るかもね」と納得感というものが得られてくると、さっき言ったように推し、好きと思うときに、何かしら強い思い、意志みたいなものがあってそこに共感できるところがあるので、そもそもそこについては千早に共感していた部分があったので、そこに納得感が得られたら速かったですね、あっという間に堕ちました。

 

・発表の要約

―ありがとうございます。では、早速ですがアイマス学会の発表について伺っていきたいと思います。Nestleさんはご自分で企画運営されていましたICMAS2020で発表もなされていましたが、そのダイマ方程式という概念を提唱されてました。これについて説明していただきたいのですが。

はい、ありがとうございます。ICMAS2020では「実在性プロデューサー」というタイトルで発表の方をさせていただきました。そもそも我々今プロデューサー(以下原則としてP表記)と名乗っているわけなんですけど、それってペルソナというものを被っている、仮面をつけてPに扮している状態であると思っていて、でそのペルソナって抽象的なペルソナなのか具体的なペルソナなのかというところがあると思っていて、シンデレラガールズのPのペルソナというものが非常に抽象的なんですね。で、そもそもシンデレラの、モバマスの話をしていますが、モバマスってすごく情報量が少なくて、Pという設定は与えられているが、その中に性別が規定されているわけでもなく、セリフがどうかというのもない、なのでそこに解釈の余地というものが生まれてくると思っています。なので、各プレイヤー、ここはあえてPではなくプレイヤーと呼びますが、各プレイヤーはそれぞれ担当しているアイドルや所属するプロダクションが異なっていて、そこにいるアイドルというのは、僕が所属しているプロダクションは僕のプロダクションだし、そこに所属している育てたアイドルは、例えば同じ北条加蓮だとしても、僕の育てた北条加蓮と誰かが育てた北条加蓮は別の存在だという風に規定できるじゃないかと、それはもともと僕が考えていたところなんですけど、そういう風に解釈できるんじゃないかと考えていて、それを言葉で言うとすごい長くなっちゃったので、数式にエイヤとおいて、それぞれのアイドルを持っているPがその子の話をするという風に考えるとどういう数式にできるのだろう、というところでダイマ方程式というものを作りました。ダイマ方程式は、ダイマをしているときに、XさんがYさんに対して何かしらのダイマをしていたときに動くその情報の流れを表現している、そういう方程式なのですけど。

                Ay’=Ax+Ay+b 

(A:仮定した対象アイドルの実像 b:認知の歪み定数 Ax:Xさんの対象アイドル像 Ay:Yさんの対象アイドル像 Ay’:ダイマ後のYさんの対象アイドル像)

で、そのXさんが持っているイメージ、対象アイドルの尊みと僕はいいましたけど、そのアイドルのイメージというものとYさんが持っているアイドルのイメージというものは違うものだという風にこの数式ではもう定義していて、違うものなんです。また、XさんがYさんに伝えると、言語のフィルターや解釈によってイメージが変化してしまうんです。これを踏まえると、あるアイドルに対してその人が持っている考え方やイメージというものを人に伝えるときには、そもそもその人が解釈をした結果というものがあって、その解釈した結果を言葉にして伝える。それを別の人が自分の解釈のフィルターを通して受け取るというところで、イメージというものが書き換えられるタイミングが三回ある、という風にそのダイマ方程式の中では言えると思っていて。で、そうすると同じダイマを喋っているはずなのに全然違う受け取られ方をされることもあり得るというところもあるし、そもそも大前提として持っているアイドル、北条加蓮とかに対してのイメージも全然違っていいんだよね、数式の定義上違うのだから違うものでいいよね、という風におきたかったのですね。なので、色んな解釈があって、それは全部いいものだから、是非聞かせてくださいという形で、あなたが持っているイメージを知りたいんです、というところであなたの担当アイドルについて教えてくれませんか?という形で発表というものを最後に締めくくって終わりにしました。

 

・今後の展望

―なるほど、ありがとうございます。ICMAS2020を開かれていたわけですが、今後開きたい学会はありますか?

そうですね、ICMASは学会ではないという風に僕は思っているのですけど。まぁ2021についてはぜひやりたいなぁと思っていますし、シャイニーカラーズというところに最近力を入れているので、シャニマスの学会についてもやりたいと思っていますし、あとアイドルマスターってすごく曲が魅力的なので楽曲に対しての学会なんてものもやりたいなと思うんですけど…

―いいですねそれ

そう、めっちゃやりたいんですけど、楽曲の話をするとなった時に、どうしても流さないとわからないですよね?

―流したいですねぇ…

そうすると、諸々の情勢でオンラインでやるとなると著作権的な問題が何かに引っかかってくるので、ちょっとなかなか難しいですがいずれ何とかして色々うまい方法を見つけてやりたいなというのはありますね。それこそ権利を申請するとかね、でもいいからやりたいなと、あと事務員さんが好きなので、小鳥さんとかちひろさんとかね、その事務員さんに対してそれぞれの解釈を語り合う学会のようなものもあったら面白いなという風には思っていて、やりたいことはいっぱいあります。

―では、今後ご自身がアイマス学会やそれこそICMASに参加される中で、ダイマ方程式を更に発展させていく狙いとかはありますか?

ダイマ方程式を発展させるという意図は正直なところなくて、なんでかというとそのダイマ方程式というものを考えついて作ったというのは、そもそもICMAS2020というものを開くうえで、僕の中で一個シンプルなメッセージを込めていて、発展させていってより複雑にしていくことはあまり考えていないです。発展の方向性はあるかと聞かれると、ないというのが解答になります。

 

・犯行動機

―シンプルなメッセージというのはというのは何なんでしょう?

ICMAS2020というのは第9回シンデレラガールズ総選挙に向けた各Pが自分の担当アイドルをダイマする場として作ったのですけど、もともと僕担当の北条加蓮について同じ同僚の加蓮Pと何度か話す機会があったのですけど、同じ加蓮Pでも全然解釈が異なってくるという経験が結構あったんですね。でそれは決して悪いことではなくて、「あ、そういう解釈があったんだ、それ面白いね」みたいな、むしろプラスの方向なんですけど。全然違うことを同じカード同じセリフ同じ服から得ているんだなということに気づいて、それは一個の大きな発見だったんですね。それを受けて、ダイマ大会を開くとなると、解釈違いはほぼほぼ間違いなく起こる、それに対して何かマイナスの感情を抱いたり、あるいは言ってきたりする人がいるかもしれない、という風に思ったので、最初にここはそういう場です、皆がいろんな自分の解釈を話す場です。なので、「あなたにとってそのアイドルの解釈というものは尊重されるべきものであるし、存在するものでもあり、それは一つのあり方です。ただ、誰かが喋っている別の解釈も両方とも存在してよくて、その一個一個の解釈というものが集まってある意味一つのアイドル像というものを作っているんじゃないでしょうか」という考えを落とし込むと、皆違って皆いいよね、と。個々の解釈は否定できない、もし自分が受け入れられないんだったら、存在を否定せずに自分は受けいれませんでいいじゃない。それをまずICMAS2020の中ではこういうルールではないですが、そういうマインドセットでいてくださいということを言いたいと思ってダイマ方程式という一つシンプルな形に落とす、ということをやったんですよね。

―となると、いわゆる定式化が目的なのではなく、手段としての公式化が目的だったということですか?

そうですね、式を作ることが目的ではなくて、メッセージを伝えるときにこうしたら伝わりやすいだろ、という(笑)

―伝わりやすいんですかね、公式…

それは理系人間のよくないところがでているというかなんというか…

―なるほど、もしかしてそのICMASの発表順としてNestleさんが最初にダイマ方程式、実在性プロデューサーについての発表をしたのも、それが狙いだったと

そうですね、自分を一番に据えてこういう発表をしたのは完全に狙いがあって、この会の場の一番最初の発表というのはこの場の空気を、雰囲気を作るものだと思うので、こういう場なんですよという空気を作るという意図をもって発表を一番にしたという意味はありますね。

 

・私的P観

―最後になりますが、P観やアイマス観を聞いていきたいと思います。

P観…

―P観というのは、Nestleさん、個人的にはすごい面白い方だなと思っていて。まず、アイドルマスターの世界に私たちはいるじゃないですか?

…はい。

アイマス世界はどのようなものだと捉えていますか?

なるほど?アイマス世界をですか?それはバーチャルワールドの中の話をしているのか、リアルワールドの話をしているのか…

―そうですね、私たちがPと名乗るじゃないですか。私は名乗るんですが、その自分でPと名乗っている人とアイマスの関係性というか…Pって何なの?と聞いた方が早かったですかね。

なるほど、Pは職業だと思っています。

―職業?

当たり前のことではあるのですが、今僕は社会人なのですけど、社会人の時のNestleって当然その社会人としての仮面を被っているんですね。真面目に働いてますよ。で、一度退社をしたらその仮面を一回外して、プライベートのNestleという仮面を被るわけです。で、その時にPという仮面を被るかもしれないし、日本酒が大好きな仮面を被るかもしれない。わからないですけど。という色んなものを、そえはあくまでも役職だったりとか仮面だったりとか、その時にまとう服なんですよPって。なので、アイドルマスターというものと関わるときに、その服と仮面を身につけて、アイドルと向き合う、ないしは同僚と向き合う。こういうものかなと思っています。

―ロールのようなもの

ロールですね、まさしく。シンデレラガールズのプロデューサーの仮面は抽象的なので、ゲーム内のテキストに左右されない。その世界に自分がロールを与えられて行動しているように感じられるわけです。なので、まとめるとシンデレラガールズというものはそもそも抽象度が高いゲームだから、解釈の余地がありますと、解釈の自由度が高いんですと、だからそのそれぞれの解釈というものは独立したものであって、それがある種一つ一つの星のようなもので喩えることができるんじゃないかという風に思っていて、もちろんその、例えば北条加蓮というアイドルに対して持ってるイメージだったりとか、印象だったりとかは色んな解釈というものが集まって構成された“星座”のようなもの、なんじゃないかなという風に思っていて、その“星座”が200、300、300人?くらいのものが含まれているアイドルマスターの世界って、もう宇宙のようなもので、でしかもその一個一個の星っていうものはプレイヤーの数だけ、プレイヤーがアイドルに出会えば出会うだけ増えていくものなので、どんどんどんどんその宇宙というものは広がり続けて、色んな星が生まれて、もちろんその星っていうものは一つの“星座”という一つのアイドル像の中にどんどん内包されていくものなんですけど、それがどんどんどんどん広がっていって大きな世界になっている。そういうのがアイドルマスターなのかなという風に思っています。

―個々のプロデューサーが思うアイドルを星とみなし、それを持ち寄ることでアイドルを星座として認識する...面白い考え方だと思います。もう一つ気になったのですけど、先程プレイヤーとPをあえて言い分けるというか、表現を変えていた部分が見受けられたのですが、これはどういう狙いがあった、あるいはプレイヤーという言葉がPという言葉を含まない空間があるというか、違いというものはありますかね

これは意識の問題だと思っていて、あくまでもゲームプレイヤーとして目の前のキャラクターと接する人が間違いなくいると思っていて、だからこそプレイヤーと呼んだ方がいいかなという考えが、さっきの表現です。その時にPの仮面をつけているのかいないのかというのは問わないんですよね、ゲームをプレイしている人がプレイヤーなので、その時にPの仮面をつけているならPだし、つけていないなら別の存在になるという風に思っていて、それを包含した総称がプレイヤーかな、というイメージですね。

―なるほど、その場合はロールというか状態のような表現なんでしょうか。

そうですね、そこちょっと同じ話をしているのに違う単語を使ってしまって恐縮なんですけれども。その場合は状態になりますね。まぁ、ロールはある意味状態じゃないですか。どういうロールに今ついているかって。

―確かに状態といえば状態ですね。先程“星”と“星座”という例えが出てきましたが、設定であったりセリフであったりを表現している公式さんというPがいるわけじゃないですか。これは公式が作り出すものは他のPが作る“星”と同じようなものでしょうか。それとも別種のものでしょうか?

えーっと、同種であり別種でも構わないというのが僕の考え方で、というのは公式さんが作っているアイドル像というものがあって、そこから一部分を切り出してイラストであったりとか、セリフであったりとか、歌であったりとか、というものに落とし込まれていく。それを我々が受け取って解釈してどんどんアイドル像のようなものを作り上げていくのだと思うのですけど。星座って、例えばオリオン座は見方によって違う、一番シンプルなオリオン座と、周りの星をいくつか選んできて、もうちょっと広い形のオリオン座があると思うんですけど、そういうイメージで公式が出しているものを再解釈して違うもの扱いにしても、それはその人の解釈だしよくて、同じようにとらえてもよくて。なので公式の人が出しているアイドル像、星のようなものは、我々が受け取る際に同じような形で受け取れるかもしれないし、全く違う形の“星座”として…全く違うはないと思うんですけど、ちょっとちがう形の“星座”として捉えられるということはあっていいし、そういうものだという風に僕は理解しています。

―なるほど、かなり難しい質問になるのですが、例えば、冬優子さんのとても有名なセリフで「あんたはふゆとここで死ぬのよ」ってあるじゃないですか。あれは言ってしまえば、公式さんが作り出す構想の範疇にある“星座”から逸脱しているじゃないですか。私はそれを知ってしまったので、ふゆを見るたびに一瞬思い出すわけです。このように“星座”の外の“星”をつないでしまった事で作られた新しいアイドル像は認められるべきだと思いますか?

はい。それは解釈の仕方だと思うので、認められていいと思います。あまりにも遠くにいる場合ですよね。「あんたはここでふゆと死ぬのよ」というのはかなり親和度が高かったので、それこそネットミームレベルになっているのかなと思うのですけど。例えば真乃が「あんたはここで私と死ぬのよ」って言いませんよね。これってなんでそういう共通認識が生まれるかというと、公式からある程度情報が得られている。で、そことかなり乖離しているとちゃんと感じるからなんですよね。で、一方で「あんたはここでふゆと死ぬのよ」ってかなり近いという風に多くの人が感じ取った。別に多くの人が感じ取ったからいいというわけではないんですけどね。ちなみに僕も結構「あんたはここでふゆと死ぬのよ」はものすごく好きなんです。うわ言うなって思いましたもん。冬優子なら言うなと思いました。それがあって、それはひとつ形としてあっていいと思うし、何だったら僕別に真乃が「あんたはここで私と死ぬのよ」と言うのもアリだと思うんですよ。ただ僕は受け入れられない(笑)それはそう思う人がいてもいいし、そういう解釈があってもいいのだけど、僕はその解釈は違うかなと自分の中に取り込むことはしない。

―もしかしてですけど、“星座”の意味でズレてるのかな…お尋ねしますが、Nestleさんにとって“星座”は「点と線で成り立つ像」ですか?それとも「点を含む領域」ですか?

そもそも星座を認識する時に、あれは3次元空間のものを天球という2次元平面に落とし込んで捉えるわけじゃないですか。そうなると、2次元の平面上では隣り合っている点も実際はものすごく遠いところにあったりするわけです。自分の言っている星と星座と宇宙って直接3次元空間でイメージを捉えてしまっています。もしここで言う「像」と「領域」が平面に落とし込まれているものだったら前者ですし、正確に3次元空間のまま捉えているものであれば後者になります。先程の例でいうと冬優子が「あんたは」を言うとより冬優子のイメージ空間の中心に近いところにその解釈があるのだろうし、真乃の場合は中心から大きく離れたところにある気がする。それが平面になると正確に表現できない可能性が高いんですよね。アイドルのイメージ像を星座とするなら、どこまでの解釈をそのアイドルとするのかという認識はそれぞれ異なっていて、ものすごく狭い人もいれば広い人もいる。その境界をどう定義するかがそれぞれのプロデューサーが解釈するそのアイドルの像の違いなんだと思います。

―好きなものは取り入れればいいし、他者に強制しないだったら、逆に自分の嫌いなものは見なきゃいいしみたいな、そういうスタンスを常に取られているような印象を受けますね。

そうしないと心がざわつくというのもあって。そういう風に思っておかないと、誰かの心をざわつかせるかもしれない、など考えてしまうとダイマってできないので。大前提としてこれは僕がそう思っているだけですが。というのは毎回自分の発表の一枚目のスライドないし二枚目のスライドに絶対入れるんですけど。そういうものです、そういうスタンスでいます。

―なるほど、ありがとうございます。

 

―(温泉卿)解釈は人それぞれ違うもので、違って良いと仰っていましたが、全く違う解釈が同じアイドルだとする同一性の担保はどこでなされているのでしょうか?例えば小松さんコスプレの北条さんを北条さんと認識する要因というのはどこにあると思いますか?

あくまでもそこに割り振られたラベルに依存していると思います。あるイラストレーターさんが「加蓮を描きました」と言われていることで認識できていたりとか、SSの中で加蓮のセリフだと明示されているからわかるとか。もちろん、衣装や髪型、目の色、小道具、口調、文脈の中に共通項目として公式から提示されているものがあれば別だと思います。北条加蓮ならポテト、とかね。逆に言うとそれが全く無い場合は、よほどその描き手の人と自分の中の認識が合っていないと共有できないと思います。小松さんコスプレの加蓮であっても、睫毛や目の色、肌の色の微妙な違いとかがちゃんとあれば分かると思いますが、つけまつけてカラコンいれて化粧されてライティング完璧にした写真1枚渡されただけなら正直わかんないと思います……情けない話ですが。

―いえいえ…主な要因はラベル、名づけで、その判断の精確さは細々とした知識によって上昇する、といった感じでしょうか。

そんな感じですかねえ。精進します。

―これに関して人間の認識能力の限界だと思うので…ところで、ミッシングムーンから入ったことによる影響みたいなものってあるとお考えですか?

めっちゃあると思っています。僕にとってのアイドルマスターというゲームはやっぱりミッシングムーン、というかSP…アケマスと箱マスかな、のイメージがすごく強くて、ポチポチゲーがアイドルを育成している感覚になれないんですね、僕は。なので逆にシャニマスにすごいのめり込んでいることはそういう理由なのかなという風に思っています。もちろんキャラクターは好きだし、コミュも大好きだし、何だったら音ゲー大好きなので、それはそれでゲームとして楽しんでいます。ですが、育成をするゲームというジャンルで捉えられてないし、僕はアイドルマスターを育成ゲームだと思っている節があるので、そこのファーストインプレッションがSPだったというところが、かなり強烈に影響を与えているんじゃないかと。

―最後になりますが、自分の中でアイマスを育成ゲームだと考えているからこそ出てきた発想ってありますか?

それこそたぶん僕が育てている北条加蓮とあなたが育てている北条加蓮は違うよねとか、そういう発想は自分が育てている子に対しての思い入れが強いからだと思っています。で、あんまりいい言い方じゃないですけど、ポチポチゲーの方だと育成って基本的にレッスンをして親愛度をあげて特訓するというのが基本的な流れだと思うんですけど、育成ゲームの方って、自分でレッスンを選んで、レッスンに失敗したりとかもして、結構選択する自由度が高いじゃないですか、いろんなルートがありえるというところが、やっぱり大きく異なってくる部分だなぁと思っています。そこに僕は育成ゲームというところを強く感じて違うものだと認識をするようになった理由があると思っています。アイドルを見て違うものだと認識するようになった最初の原因。だからこそ今モバマスの方に対してもそういう感覚を抱いているのはSPの名残があるからなのかなと。やっぱり僕にとってアイドルマスターは「アイドルを育ててトップアイドルにする」ゲームなのかなと思っていて、だからこそシンデレラの総選挙というイベントが好きなんですよね。昨年ありがたいことに北条加蓮はシンデレラの称号をいただきましたが、これからもまだまだ総選挙の選抜メンバーに選ばれるように頑張りたいと思っています。今年はどうなるのかまだわかりませんが、もしできそうならまたICMASのような機会は作りたいと思っているので、機会があれば是非ご参加いただければと思います。

 

・取材後記

ダイマ方程式やペルソナなどといった興味深い発表の裏にある、いわば思想の尻尾のようなものを捉えることに成功したのではないでしょうか。ここでアイマス思想地図に四つ目のピンが刺せたわけですが、果たしてこの地図は何次元なんでしょうね?

次回のインタビューはかめぴさんに伺っていきます。公開は【01/16】予定です!

 

(文責:温泉卿)

 

 

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狂気の弁明#3

学会発表者の狂気に迫るインタビュー、第三回はこの企画の元凶でもある温泉卿さんに来ていただきました。
Twitter:@qieziyan ブログ:https://kikuimusi.hatenablog.com/

 

アイマスとの出会い

―まずアイマスとの出会い、それから今日に至るまでのアイマス歴といいますか、それを大雑把に触れて頂けたらと思います。

そうですね、まずは先輩から「モバマスをやれ」と言われまして、それで入れたというのが最初の出会いでしたね。その時はおそらく振り分けポイントの肥やしにされる予定だったのでしょう(笑)。あまり琴線には触れなくていったん遠ざかってしまったのですが。後日に何の因果かデレステを始めたのですが、なぜ始めたのかは忘れてしまいました。その後…あれはいつぐらいだったかな…3,4年前くらいにちょっと転機があって、そこでデレステとかモバマスとかだけじゃなくてプロデューサーも含めたアイマス全体のコンテンツ、私はよくプロデューサーさんやらアイドルやら含めて全体として“アイマスコンテンツ”という言い方をするのですが、“アイマスコンテンツ”そのものに興味が移りました。

―最初はシンデレラガールズから入って今はどのレーベルというよりかはアイマス全体に興味がある、という感じですかね。

そうですね。アイマスアイドルとプロデューサーさんたちも含めた全体、という言い方をするといいかもしれません。

―ちなみに今やっているゲームとか、あるいはアニメとかで直接的にかかわっている作品とかはあります?

今も継続的にやっているのはデレステくらいですかね。一応SideMなんかもアニメはリアタイしたのですが…そんな感じですかね。あまり誠意があるとは言えないかもしれませんね。

 

・担当や推しについて

―まあプロデューサーは人それぞれですから。続いてですが、好きなアイドルと言いますか、担当であったり推しについて教えていただきたいです。

担当っていうのはいないのですが、一応推しとして小早川紗枝さんを挙げられると思います。

シンデレラガールズの紗枝さんですね。好きになったきっかけとか覚えていますか?

切欠としては・・・デレステを始めた直後にパステルピンクというイベントが始まりました。そこで好きになったのは確かなのですが、どこが好きになったのかと言われるとその時どうだったかは覚えてない。ただ一つ記憶に残っているのは別の先輩と飯を食いに行ったときに「アイマスどう?気になる子いた?」みたいなこと言われて、「今小早川さんがちょっと気になっていますね」「いいじゃん」みたいな会話があったことは記憶にありますね。

―なるほど。何となく興味があったというかちょっと気になっていたといった感じですかね。

まあ、心惹かれるものはあったのではないかと。

―ちなみに、今のあなたから見て推しポイントというかここがいいよねっていうポイントとかあります?

うーん、本来これを言える立場にはないのですが…
強いて言うなら人格、というとちょっと大げさですが。私の思う小早川さんって、これはすごく大雑把な印象ですが、柔らかいが中に硬い芯がある子だと思っていて、そういう印象を人に持たせるところが好きなのかもしれませんね。あとは…何でしょう、風姿花伝的に満点、というべきか…身枯れても花は咲き続けるビジョンが見える。そういうことかもしれない。

―難しいこと言いますね(笑)ただ、なんとなくわかります。一つお伺いしたいのですが、推しは紗枝さんと教えていただいたのですが推しの定義はどこに置いているのでしょうか。

推しの定義ですか、これは小早川さんを無理に枠に入れるとするならば推しであるよ、という話なので、推しそのものの概念について語るのはなかなか難しいですね。そうだな、強いて言うならば、自分が思い入れのあるアイドルだったらそれはもう推しでいいような気がしますね。

―思い入れ。

はい。強い感情を抱いているのであれば推しでいい気がします。自分がプロデュースできないけど、でもやっぱり特別である。という概念が推しだと思っていて。僕の場合担当という概念が存在しないので、これ以外に言いようがないのですけど。

―強い思い入れとのことですが、温泉さんにとっての紗枝さんはどういう類の強い感情なのでしょう。例えば遠くから見ている人であったり、オフで仲良い友人だったり、まあいろいろあると思うのですけど。あなたにとってはどんな感じでしょうか。

そうですね…知り合いの娘くらいの感覚ですかね。

―知り合いの娘。…というと?

なんだろうな…小早川紗枝担当Pのよき知り合いでありたい、というとわかりいいですかね、この程度の距離感なのかな、と。基本的にあまり関わりたくないのですよ。それは嫌だからじゃなくて、関わってはいけないような気がするってだけなんですけど。

―だから「近いけど外から見ているような関係性」というか、そんな感じの距離感に落ち着くと。

はい。

―なるほど、ありがとうございます。

 

・発表の要約

―ここからはアイマス学会in北九州での発表についての質問になるのですけど、温泉さんの発表スライドも表紙は紗枝さんでしたね。概要というか、大雑把に目的・手段・結果など教えていただきたいです。

あの画像は「概論」っていう言い方、言葉とバスガイドっぽい衣装がしっくりくるなと思って適当につけたのですけど(笑)。先ほど“アイマスコンテンツ”に対して興味があるっていうのをお話ししたじゃないですか、その“アイマスコンテンツ”っていうものってなんだよ、アイマスとは一体?という疑問に解を与えることが目的でした。

―確かに誰しも通る道ですね。

そうですね。アイマスって何、アイドルって何っていう純粋な疑問を深く詰めていきたい。何かしらの答えって出せないかな?という試みが最初の一歩でした。で、それに対する方法として今まで人類が積み上げてきた叡智、学問から方法論を引っ張ってきて応用させれば一定の答えがでるのでは、という期待がありました。

―既存の手法を使ってアイマスを考えてみようって感じですかね。

そんな感じです。それで考えた事というのが大きく三つあって、心理学と西洋神学と文化人類学です。それぞれ何故かというと…まず心理学からいきましょうか。アイマスとプロデューサーさんの関係っていうのは、結局プロデューサーさんがどうそれを認識するかっていう問題だと考えたわけです。そのアイドル或いはアイマスっていうのをプロデューサーさんがどう認知・認識するか、それを考えるならば心理学っていう物は避けて通れないと思いました。次に西洋神学ですね、これはアイドルってそもそもどういうものだっけという確認のために用いました。アイドル、偶像というのはエイドロン(eidolon)っていう言葉の訳語です。じゃあそのエイドロンっていうのは具体的にどういうものとして定義されているのかってことを考えようとすると、西洋神学に触らざるを得ないという部分がありました。最後の文化人類学ですが、“アイマスコンテンツ”はもはや一種の文化だと私は考えています。したがって、人と文化の関係性というところで文化人類学を使う、ということになりました。で、それぞれの方法から答えが出るかなと期待したのですが、ちょっと困ったことになりました。何かというと余りにも節操なしにいろんな分野から持ってきちゃったせいで、それぞれの分野の問題点を全部背負ってしまった。これはもう収拾がつかんぞという話になった上に、さらに大きな問題を見落としていたことに気づいてしまったのです。本当に既存の理論をアイマスに応用していいのかという問題です。それを考えるために持ってきたのが哲学という面があります。ということで、哲学を踏まえるとこれは方針が悪かったというよりは方法が悪いという事に気づかされました。今までは「アイマスはこれだ」って言えるはずだ、というのが大前提だったのですが、これはちょっと無理があるぞと。「アイマスはこの辺りにあるぞ」くらいだったら言えそうだなと。

―ピンポイントを指すというよりはこの辺だと大雑把に囲ってやる、と。

ここっていうよりは柵の中にいる、みたいな。これだったらできるっていうことに気づきました。というところでいったん私の発表はおしまいです。

 

・今後の展望

―ありがとうございます。ちなみに今後の展望というか、前回の発表からこれくらい進んだよ、今後どっち方向に舵を切っていきそうだよなどという事はありますでしょうか。

アイマス学概論自体が見切り発車で走らせてみたらガッタガタでどうしようもなかったっていうところがあったので、それに対してもう一回丁寧に積みなおしてあげようっていう試みを今やっています。便宜的にver.2.0という言い方をしていますが、今ver.1.2位までは来たかなという感じですね。多分ver2.0は「アイマスが宗教である」という命題が要になってくるのではないかと考えています。しかもただの宗教というよりは…進歩というと言い方が悪いですが、発展というといいのかな、人間社会の変動と合わせて一歩転換した形の宗教なんじゃないかなと思っています。

―新しい形と言いますか、そんな感じでしょうか。

そうですね、そんな感じなんじゃないかなってことが言えそうかなくらいまではきていますね。

―...先ほど聞き流してしまいましたが、目標がver2.0で現在ver1.2である、と。バージョンごとの違いと言いますか、ここまでの思考の流れについて教えていただけますか。

ver1.0は「アイマスはこれだ」と言えることを前提にして材料を用意したものです。しかし言えなかった。なのでver1.1では使った材料の再確認を行い、神学と文化人類学は曖昧な対象に効果がありそうだと判明したところまでいきました。そこでver.1.2に移行し、効果の判定を行う段階まで来ました。こんな感じですかね。

 

・犯行動機

―そもそもアイマス文化人類学だったりを使うのは珍しいと思うんですけど、なぜこの分野を扱おうと思いました?

そうですね、まずプロデューサーさんも含めたアイマス全体のコンテンツというものに興味があるっていうのが一つ、あと正直今の二次元アイドル文化、勿論アイマスに限らずになんですけど、っていうのは一種の文化的な爛熟期にあるっていう考え方を私はしているのですよ。具体的に言うと、未来の人類からみるとその期間に特徴づけられる文化みたいなものになるかなという風に期待をしていて、語弊を恐れずに言えば百年後とかの日本史の教科書に、たとえば…

天平文化、みたいな

そんな感じです。国風文化、みたいな感じで二次元アイドル、まあアイドルに係るかわからないですけど「二次元文化」という風な感じで残るような、特異な文化の真っただ中に我々はいる気がしています。じゃあ「この時期にこういうものがあった」っていうことを残すためには何が一番いいのだろうって考えたときに、学術のベースに乗っけるっていうことが一番効率的なんじゃないかなという風に思ったわけです。例えば平安時代日記文学ってあるじゃないですか。あれってどうして現代まで残ったのかって考えると、恐らく有職故実の影響が強いのではないかと考えていて。当時有職故実っていう、昔の先例っていうのを研究して儀礼とかの参考にする学問があった。で、そういうことに必要なのが昔の貴族の日記です。有職故実学にとって一番重要な史料って貴族の日記だった。だからああいう日記が写本とかになって残っているわけです。

―ああ、学術資料として。

そうです。そう考えると、現代における学問の形にアイマスっていうのを書き直してあげれば、恐らく普通に他の方法をとるよりも本質が残っていくのではというのが僕の狙いではありました。勿論アイマスを知りたいっていう気持ちもありますが、別の理由としてそういうのもあったって感じですね。

 

・私的P観

―なるほど、ありがとうございます。ここからはアイマス学会というよりは温泉さんのアイマス観について伺っていこうと思っています。先ほど「担当がいない」と仰られましたが、これはどういう意味なのでしょうか。

これに関しては私が私自身をプロデューサーでないと思っているから、としか言いようがない…

―…というのは?

なかなか難しいですよね(笑)。僕にとってのプロデューサーの定義というやつが、「私以外の誰か」、誰かっていうのは複数でも単数でも構わないのですが。少なくとも私はプロデューサーじゃないぞっていう確信があるらしい。

―どういう人がプロデューサーかではなく私はプロデューサーではないと。

どういう人がプロデューサーかと言われるとちょっと困ってしまいますが、少なくとも俺はプロデューサーじゃねぇぞっていう、プロデューサーの資格がないって言い方をした方が良いですかね。というよくわからない確信があるみたいです。

―ちなみにその確信を得るに至ったきっかけなどありますか?

そうですね、最も気が狂っていた時代にチケット持たずにSSAに行ったのが一つの契機ですね。

―音漏れではなく?

音漏れではなく。はい。あの時は一番気が狂っていて、何をしたかっていうと…当時私埼玉に住んでいて、なんかこう急に思い立って「そういえば今日ライブやっているなぁ、SSA行くか」ってSSAに行きました、昼に。で、ライブの開場前ってプロデューサーさんたちが集まって名刺交換とかやられているじゃないですか。その辺をふらーっと歩いていました。本当に気が狂っていたのでしょうね。今考えても意味がわからないです。

―なんで?とは思いますね。

で徘徊して、いったん違う場所で時間をつぶして、今度は終演間近にもう一回行って、広場は真っ暗ですよ。街灯がポツンポツン見たいな所のベンチで本を読みながらボケーっとしていました。当然終わるとプロデューサーさんたちが一気に出てきて、さいたま新都心駅までダッシュする様を眺めていた記憶があります。

―帰ろうとしますよね、必死に。

帰ろうとして。ダッシュする。それを見ながら本を読んでいたのですよね。あれが大きなポイントです。

―えっと、それは…何をしに行ったのですかね。

わからないです。

―それは演者に興味があってとかそういうものでもなく?

なくて…正直今でもよくわかっていません。なんでしたのか、完全に奇行ですよね。まあ、そこで曖昧だった違和感が鮮明化したというのがあって、これはアヤシイ言い方なのですが…アイマスって虚構じゃないですか、言ってしまえば。それに対してこれだけ人々が熱狂するのはなんでだっていう疑問があって、経済を回したり、熱心に応援したりとかするじゃないですか。或いはアイドルと声優さんという二者を同一のように見るとか、客観的にみると少し不思議な点っていうのがいっぱい見えてきたのだと思います。

―確かにそう言語化すると不思議ですよね。

特にSSAの熱狂した空気の中に一人だけ変な奴が紛れていると特に強く感じました、そういうところを。そこがポイントでしたね。「虚構、ないものに対してなぜこんなに熱狂できるのだろうか」っていうのが実はこの発表の裏の原点でもあった。人をここまでするアイマスって何なのっていう疑念が裏に隠れていたりします。

アイマスって何なのだろうっていう疑問を持った裏というか、切欠ですかね。

はい。あんまり人にする話でもないのですけど(笑)。多分自身をプロデューサーじゃないって考えているのも基本的にそこが原因のひとつになっているのかなという風に思っています。結局はアイマスの世界というものを信用していないらしいので。

―信用していない?

多分。…難しいですね。信用しないという言い方はよくないですね。正確にはアイドルに人格を認めていない、というべきかもしれない。アイマスアイドルは意識を持ちません、つまりあれは人格を持たない、与えらえた値に対して何かを返すだけです。これは消極的な自己への肯定でしかなく、そこに進展はないと考えてしまう節があります。こういう思考を一歩引いて観察する視点も存在して、彼がこういうクソや…失礼、根性が捻じ曲がった思考をする人間にはPであってほしくないし、なるべきでもないと思っているのかもしれません。

―彼...?先ほどから妙に他人事というか、温泉さんの中のプロデューサー像に対して温泉さんの語り口が遠い気がするのですが。

そうですね、これは私の中の視点が一定しないからだと考えています。視点が浮動して、巨視的に見るとPと非Pの境界にいる、みたいな感じでしょうか…

―このインタビュー中はプロデューサーでない温泉さんに向き合っているのでしょうか。

…正直微小時間の自分の位置はわからないです。ただ、「Pではない」と言いながらアイマスから離れられていないという矛盾を上手く説明してくれるのが”浮動”という概念でした。

―なるほど

ただ、これまで話してきた内容は全て後付けで、実際にこういう仕組みが私の中にあるのかはわかりません。ただ確信をもって言えるのは「Pではないという確信がある」だけで、それ以外は全て仮説です。

アイマスから離れられないとのことですが、それは何によって繋ぎ留められていると考えていますか?

重力に感情が引かれている感じですかね。所詮オールドタイプなので…

ーつまり魂がアイマス方向に指向していると。

それは否定できませんね、おそらくそうなのでしょう。

ーとなるとアイマスを学問を用いて読み解こうという姿勢はいわば自分らしさに反するというか、自分を薄める向きに考えているように思われるのですが...

それはLotusさんは人間の人間性の根源を感情と捉えている、ということを意味しますか?

ー人間たる所以というか、社会集団の中での個人の存在意義は感情にあると考えています。温泉さんはどちらかというと感情より理性を重視しているように見えるのですが。

そうですね、感情を理性で舵取りしてこその人間だと思っています。

ーという事はアイマス学会での発表をはじめとした一連の思索の原動力は感情ではないという事でしょうか。

その通りです。知的好奇心で駆動していました。

ーなるほど、知的好奇心。しかし好奇心を自身の心より優先するとはなかなか思い切った選択ですね。

優先しているわけではないのです。そうなってしまっただけです。時々思います、「なんでこんなことになってしまったんだ?」と。

ー見るからにヤバそうな状態ですが引き返すつもりはないんですか?

そんなにヤバそうですか(笑)まぁ、どちらにせよ戻ることは叶わないでしょう。なんといっても好奇心の手綱取り落していますから。

 

・取材後記

「学会発表者の狂気が知りたい!」と言いこの企画を立てた温泉卿さんですが、こいつが一番狂気を纏っているのではないだろうか。彼へのインタビューは大層気力を消費しました。

次回は新企画として温泉卿さん、兎爺さんと私Lotusの三人、そしてある学会発表者の方に司会をお願いして座談会を行います。総集編みたいなものです。果たして司会の方の胃は無事でしょうか。

座談会の日程は【12/19】です。三狂の運命や如何に。

(文責:Lotus)



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狂気の弁明#2

学会発表者の狂気に迫るインタビュー、第二回は宗教学と科学の両刀でアイマス学会に切り込んだ兎爺さんに来ていただきました。
Twitter:@usajii357 ブログ:https://usajii357.hatenablog.com/

 

アイマスとの出会い

―(温泉卿)アイマスの出会いというのを聞いていきたいんですけど

(兎爺)1番初めに出会ったアイマスシンデレラガールズでした。アイマスに出会うまで私は本当に真っ暗な世界で生きてきたのですが、たまたまオリックスバファローズという野球チームに少しだけ興味がありました。そんな中行われたアイマスパリーグコラボでオリックスに来てくれた小早川紗枝ちゃんが気になってデレステをダウンロードしたというのが全ての始まりです。そこからはシャイニーカラーズやミリオンライブ、765ALLSTARS、SideMの順に、色々な公式イベントをきっかけにして出会ってきました。

―なるほど。因みにデレマスから他のコンテンツに移っていった経歴っていうのはどんな感じなんですか

初めに手を付けたのがシャイニーカラーズで、これは配信が開始されたタイミングに居合わせたからです。せっかくならやってみようという事で。その次はミリオンライブでした。これはシアターデイズで開催されていた無料10連イベントに釣られて始めました。その流れで「アイマス2」という形で765ALLSTARSにも手を出し始めました。SideMはIM@S MUSIC ON THE RADIOに出演された紅井朱雀役の益山武明さんが語られたアイマスへの熱意に当てられて4thライブに参加したのが始まりでした。

 

・担当や推しについて

―なるほど。では担当や推しというのはどういった方になるのでしょうか

まず1人目の担当がシンデレラガールズ道明寺歌鈴です。彼女は巫女さんで非常にドジな子であり、よく転ぶのですがそのたびに立ち上がる、誰よりもめげない心を持っているアイドルだと思います。2人目の担当がミリオンライブの北沢志保さんです。志保さんは非常に家族想いでしっかり者なアイドルです。一方でキラキラした物への憧れというのも確かに持っています。自分を強く持っている方で、勿論それが長所になったり短所になったりもするのですがそういったところが素敵なアイドルだと思います。

―わかりました。では推しの範疇に入るような子だとどうでしょうか。

推しは3人いるのですが、まず765ALLSTARSの如月千早さんです。彼女は非常に歌声が美しいアイドルで、その歌が私を魅了して離しません。また家庭環境等私と色々な共通点があり、勝手にシンパシーを感じています。2人目が現在SideMで活躍する天ヶ瀬冬馬です。彼はアイマス2の敵キャラだった時代から一貫して「絶対にトップを取ってやる」という信念の元、どこまでも真っ直ぐに進み続ける強さを持っており、そこに憧れを感じます。最後にシャイニーカラーズの福丸小糸です。彼女もまた私と似たところがあるという点でシンパシーを感じます。ですが何よりも色々なものを抱えながら幼馴染という大きく大切で高い壁である存在に追いつこうとして努力する姿が非常に素敵だなと思います。

―ありがとうございます。先ほどデレマスには小早川紗枝から入ったという風にお聞きしたんですけど、小早川さんから道明寺さんに興味が切り替わったきっかけなどはありますか。

紗枝ちゃんのカードがなかなかゲーム内で来てくれなかったというのが理由の一つでしょうか。一方で歌鈴は始めてすぐに来てくれたRカードのスキルが回復だったという事もありまして、長い間重宝していました。また、紗枝ちゃんはすごく素敵な女の子ですし色々な強さを持っている魅力的なアイドルではあるのですが…私は彼女のPではなく1ファンだなと感じることが多く、担当は名乗らないという事にしました。ただ私にとって大切な存在である事には変わりありません。

―道明寺さんと触れている時間が長かったというのと、小早川さんに対しては自分はPと言って導く立場というよりは…

ファンとしていたかった。

―…という気持ちがあったのですね。因みに、担当と推しの間に明確な差というものはありますか?

すごく大きいものがあります。私は残念ながら汚い人間ですので、アイドルを見たときに清い心と言いますか、応援のような綺麗な心と共に残念ながら嫉妬心といった暗い心も感じてしまいます。その暗い心がどうしてもぬぐい切れないと言いますか、無視できないものになって、どうしても折り合いがつかないようなアイドルに対しては「推し」になってしまうのかな?と考えています。また、担当という存在は遥か未来の事をしっかりと考えてあげられる、具体的に言うと50年先のことをちゃんと考えて形にしようと思えるアイドルなのだろうと思います。

―なるほど。というと、担当と推しの差というのは未来を考えられるかどうかと、暗い気持ちが…

上手く私の中で整理出来るかどうか、だと思います。

 

・発表の要約

―わかりました、ありがとうございます。では次に今まで二つのテーマで発表されたと思うんですけど、その発表の要約をお願いします。

はい。まず1つ目が第二回アイマス学会in札幌にて配布しました資料「アイマスは宗教なのか」という研究です。アイドルマスターというものは長い間沢山の人々を魅了し続けてきました。ではなぜそこまでしてたくさんの人々を魅了してきたのか、その魅力がどこにあるのかという事を宗教的な観点から見てみようというのがこちらの研究の趣旨でした。アイマスから宗教的な要素を見出すことで、具体的には「神や超自然的存在」「宗教集団」「祈りの存在」「聖典・聖書」「修行」「シャーマンの存在」そして「預言者の存在」を仮定することでアイマス教というものを仮に創設しました。その上で、いわゆる世界宗教との比較や著名な宗教学者であるフリードリッヒ・ハイラーの提唱した宗教の同心円モデルとの比較を行う事でアイマス教が宗教足るものなのかという議論を展開しました。結果としましてアイマス教は宗教的要素を多く含むものの宗教足り得ない、即ちアイマスは宗教ではないという結論に至っています。

アイマスをいったん宗教の枠組みに当てはめてあげたうえで他の宗教と比較した結果宗教とは言い難いんじゃないかという形になった、という感じですね。ありがとうございます。では、もう一個の方もお願いしていいですか。

もう一つは7月に行われましたOnlineアイマス学会にて発表しました「ぷちますがく!~ぴよぴよホバリング~」という物です。こちらは「ぷちます!」に登場するぴよぴよが長時間飛行を行っているという点に着目し、その飛行に一体どれだけの労力を払っているのか、具体的に言うと何kcal使っているのかを計算しようとしました。ドローンや実在の動物、そしてコマ内の描写等からぴよぴよの体重等を計算し、それらの情報から消費カロリーを推定しました。またその数値が余りにも現実的でないものになったことから、ぷちます世界そのものの仮説考証というものも行いました。結論としまして、現実世界とぷちます世界では少なくとも物理学並びに生物学的な点において大きな相違点があるのではないかという結論に至っています。

 

・今後の展望

―わかりました。それぞれの発表内容に関して今後の展望など見えていますか?

そうですね…まず「アイマスは宗教なのか」についてですが、この研究は宗教という非常に難しいものを扱っています。いわゆる日本人と呼ばれる集団は無宗教であるというようによく言われていますし、私もどちらかというと自らは無宗教者であると考えています。しかし、どのような信仰形態を持っていたとしても人は個々人の宗教的な観念というものを必ず持っているはずです。そして私の研究についても私の宗教的な私感というものが存分に入っているはずです。そういう物を取り除いて、私感の全く存在しない結論というものを導き出すためには多くの研究者の存在が必要です。研究者が多く存在する事は様々な宗教観点を持つ人が集まる事に繋がり、結果として個々人の私感が相殺されてひとつの結論が出来上がるのではないだろうかと考えています。また、私自身がアイマスに関しても宗教学に関してもさらなる知識や経験を積み、色々な仮説考察を進められるようになりたいと思います。

―わかりました。実際私もそれは凄く思うところで、まだ人が足りないしバイアスがちょっとかかりすぎている。みんなそれぞれバイアスは持っているのですが、欠けた絵をみんなで持ち寄れば復元ができるように恐らく人が増えればもっといいものが見えるんじゃないか、という思いはありますね。...ええと、ではぷちますの方はどうでしょうか。

ぷちますの方はですね…所謂普通の楽しみ方を私はしていないと思うのですが、このような楽しみ方もあるのだと言う事を受け入れてくださったと発表を通じて感じました。もっともっと研究を深めていきたいです。更にぷちますにはまだまだ良く分からない為に研究対象となりうる内容が沢山あります。これらを解明する為にはその道に精通する方々の参入というのが必要不可欠でしょう。ですので、是非とも皆さんが得意な科目や得意な分野を持ち寄っていただいて、ぷちますというものをこういった学問的な視点から見ていただきたいなと思います。

 

・犯行動機

―ありがとうございます。では、それぞれの動機について教えてもらってもいいですか。

はい。まず「アイマスは宗教なのか」の方なのですが、先ほど申し上げました通りアイマスは真っ暗な私を救ってくれた、救済してくれたという感情を私は強く持っています。それは私にとって初めて体験する「異様な感情」だったのですが、では何故私がそのような異様な感情を持ってしまったのか、何故アイマスは異様な感情を私に引き起こしてしまったのかという点を解明したいという思いがアイマスと出会った頃からふつふつと私の中に湧いていました。そして気付けば私の中で様々な事を考察するようにもなっていました。ですからある意味あの研究はアイマスの研究でありなおかつ私自身の研究でもあったと言えます。

アイマスを知るという事が自分を知る事に繋がってくる、そういう物だったんですね。では、ぷちますの方の動機もお願いしていいですか。

こちらを語る上で重要な出来事がありました。ICMAS2020というOnlineアイマス学会の前に開催されたイベントがありました。こちらはシンデレラガール総選挙に併せて行われたダイマイベントで、私も歌鈴のお話をしてきました。発表自体は凄く楽しかったですし参加させていただけた事には感謝の念しかありません。一方で「担任をちゃんと理解していないのでは。自らの理解を正しく伝えられるような文章や発表を私は作り出す事なぞ出来ないのでは。」という感情を再確認するイベントにもなりました。自らの文章力と表現力、そして理解度に改めて絶望したとも言えるかもしれません。そんな中でOilineアイマス学会のネタを考えていたのですが、担当の話は出来ないとなった時に私の好きな作品であった「ぷちます!」について発表しようと思い立ちました。その上で北九州学会のLotusさんの発表を参考にしてぷちますに触れた時からぼんやりと考察していたぴよぴよの飛行というものを選択しました。

 

・私的P観

―なるほど、ありがとうございます。では、私的P観、自分におけるPとはどういう物なのかについてお伺いしてもいいでしょうか。

担当が二人いるという事はPとしても私が二人いる事だと思っています。道明寺歌鈴北沢志保さんという存在は、アイドルとしても人としても大きな違いがあります。歌鈴は奈良に行ったPがスカウトして連れてきた存在です。勿論その心の中にはアイドルとして輝きたいという強い意志があると思いますが、そこに対してどのように進んでいきたいかとなるとなかなか思いつかない、そういうアイドルだと思っています。ですので、スタートに一緒に居てゴール地点は彼女自身に決めてもらう、その上でどの道を使ってゴールに到達するのかという事を私というPが決める。形容するのであれば歌鈴の手を引く存在、それが歌鈴のPとしての私だと思います。

一方で志保さんは家族のためにお金を稼ぐというとてつもなく強く現実的なゴールを持っています。また彼女自身は強く自分を持っていますので、彼女自身が何を使ってアイドルとして輝いていくか、つまりどの道を通るべきかといった事を思考できる人だと思っています。ですので、志保さんに関しては手を引くのではなく前を進む志保さんの後ろを守ってあげる存在、背中を預けあってアイドル界という戦場で戦う戦友のような存在かなという風に思います。このように私の中にそれぞれ担当アイドルへの付き合い方が違う2人のPがいるのです。

―自分という人格の中に二人が内包している?

んー、ちょっと違いますかね…

―完全に別の物として...?

抽象的なのですが、私の中にいる2人のPは結論から言うと私であって私でない存在です。もう少しわかりやすく言うと、私がなり得た存在だと思います。人生のある点までは同じようなルートを辿ってきて、人生の分岐点で違う選択をした私という表現の方が良いかもしれません。そういう意味でPは私であって私ではない存在なのです。

その2人のPは「私ではない」ので彼らはある程度独立して思考し、行動しているようです。ただその3つの存在はどうやら互いに少しずつ影響しあっているようです。また、そのPはあくまでも「私」ですので思考回路といった核となる部分は私そのもの。不完全な私のようにもがき苦しみながらもアイドルに向き合っているのでしょうか。

話が飛躍するようですが、私のアイマス観というものもそこに繋がってきます。私がPとして世界に存在した可能性があるという事は、アイマス世界には私がいたかもしれないという事になってきます。ですので、もしかしたら私は志保さんの担当Pとしてアイマス世界に存在していたかもしれません。はたまた私が歌鈴のPであるという世界が存在したかもしれない。そういう意味で、アイマス世界は私の世界であって私の世界ではない。存在したかもしれないし、もしかしたら選んでいたかもしれない。

―難しい話にはなるんですけど、論理的には存在するんですが素朴にみると存在しない世界、みたいな感じ。

そうですね。目には見えないですし、他の人に見せることも出来ないですし、説明することも難しいのですが私の中には確実に存在する。そういう意味でアイマス世界は実在していると思います。

―なるほど。因みにそういうPに対する考え方だったりアイマスに対する考え方っていうのは宗教について考え始めてからですか、それともその前から持っていましたか。

かなり前から持っていました。特にミリシタとデレステに登場するプロデューサーの違いが大きく影響したと思います。彼らの違いを、そして私との違いを上手く説明し、私が納得できる術として練り上げてきたのがこの理論なのでしょう。

―宗教を考えることによって掘り下げたかった自己というのはこういうところにあったりするんでしょうか。

多分あるのだとは思います。

―こういうP観・アイマス観っていうのは論理的には存在するんだけど素朴的にみれば存在しない。でもやっぱり自分の中にはある。

そうですね、そしてそれを説明するために宗教というものに入ったという一面もあります。

―自分の中にあるという事がわかっているからこそ現実のツールを使ってぷちますを科学するという発想に至ったのかもしれませんね。

 そうですね。

―なるほど、わかりました。ではここでLotusさんからの質問に移りたいと思いますが、なにかありますか?

 

-(Lotus)興味深い内容で口を挟めませんでした。お話を聞いてていくつか気になったことが。まず担当・推しについてなのですが、福丸小糸ちゃん推しという事でしたけど、シャニマスを始めたのはリリース当時から。となると二年間くらい担当・推しがいない時間帯があったわけですよね。この間は誰が一番気になっていたとか、或いはゲーム性そのものが好きでずっとやってた、みたいな。そういう小糸と出会うまでのシャニマスへの感覚の違いとかあります?

(兎爺)そもそも私はシャニマスを歌が好きという理由でプレイしてきました。小糸と出会うまでは初めてTRUE ENDという特別なコミュを見た櫻木真乃ちゃんが好きでした。ただPとしてアイドルと高みを目指すというよりも曲が好きなファンとして付き合っていたのだろうと思います。

―なるほど。小糸についてですが、彼女と似たシンパシーを千早にも感じるとありますが、千早と小糸はなかなか離れた個性を持つアイドルですよね。一体どこにシンパシーを感じているのですか?

どちらも「家族に(ある意味で)歪められてしまった」点や「精神的な柱に強く依存している」点が共通していると感じていますし、そういった部分にシンパシーを感じているのでしょう。

―二人の担当アイドルがいて、それぞれに対して私の中に二人のP観がある、というお話でしたが、こうなると…例えば劇場にはあと51人のアイドルがいるわけじゃないですか。そのアイドルたちを担当している私ではないPっていう存在を認識したことはありますか?

勿論あります。実際にゲーム内で「アイドルから『プロデューサー』と呼ばれる存在」がいる事は事実ですからね。ただ、それは仰る通り私ではない存在だと認識しています。RPGの主人公のような存在です。言い換えれば…私の中で勝手に動かない存在と言いましょうか、外部の情報無しでは想像出来ない存在と言いましょうか…

なんと言えばいいのでしょうか…ある程度独立して存在する2人のPに合わせて歌鈴や志保さん、更には世界線までもが独立して存在しているという感覚を私は持っています。一方で「今私が担当を名乗らないアイドルのP」は独立して存在し得ないのです。公式や二次創作といった外部からの情報が有って初めてアイドル達の「プロデューサーや世界線」を「想像」出来るようになる。それは私にとっては完全なる「他人」であり、「私であって私ではない」と定義した私にとってのPにはなり得ないという答えが導き出されるのです。

ですので、ゲームに登場する「プロデューサー」はあくまでもキャラクターの1人として見ているのだろうと思います。

―これはスターリットシーズン等で起こりうる事態かもしれませんが、北沢志保道明寺歌鈴が出会った時そこに居るのはどちらも(便宜上)兎爺というPですか?それとも別人格ですか?北沢志保Pの兎爺さんと道明寺歌鈴Pの兎爺さんは同じ世界線の存在なのでしょうか?それとも自分毎に世界を作り二人の兎爺Pは出会わないのですか?その場合志保と歌鈴が出会う場においてあなたはどちらのPでいると思いますか?

歌鈴Pとしての私と志保さんPとしての私が出会う事は無いと思っています。その二人の「私」は違う世界線に居るとも言い換えられます。「志保さんPの私」と「歌鈴Pの私」が出会うという事は同じような人生を通ってきた「私」が同じ世界線に複数居る事になります。私ははるかさんのように増える事は出来ませんので(笑)、こういった事はありえない事だと思います。

ですので、歌鈴と志保さんが出会った時…私は観葉植物か何かでしょう(笑)。もしPという存在がいるのであれば、なんとなくですが志保さんのPとしてその場に立っているように思います。

―最後になりますが、「歌鈴」「志保さん」と二人の担当について呼称が明らかに違いますが、そこには何か認識の違いがあるのでしょうか?

あります。先程のお話にもありましたが歌鈴は手を引いている存在ですので年下という印象がとても強く、呼び捨てにしています。妹のような感覚なのでしょうか。一方で志保さんは背中を預けあっている戦友という印象が強い為、信頼と尊敬の意味を込めて「さん付け」をしています。実は彼女に対しては敬語を使っていますし、一時期まで北沢さんだった時期すらありました。

 

・取材後記

隠しきれない狂気の源流が見えた気がします。しかし一言に「狂人」といえど第一回と全く毛色が違う内容を伺うことが出来ました。いつかアイマス学会狂気勢分類学アイマス学会で発表される日が来るかもしれません。

なお、今後 #狂気の弁明 を使っていこうという話になったので、感想や気になったことなどありましたら是非 #狂気の弁明 でツイートしてください。拾えるだけ拾います。

次回のインタビューは温泉卿さんに伺っていきます。公開は【12/5】を予定しています。この企画の主催者の狂気、ご期待ください。

(文責:Lotus)

 

 

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狂気の弁明#1

 学会発表者の狂気に迫るインタビュー、第一回は「ぷちます!」学の先駆者であるLotusさんに来ていただきました。Twitter:@Lotus157744401P

 

アイマスとの出会い

―まずアイマスとの最初の出会いについて聞いていきたいのですが

従兄の部屋で漫画を物色していた際に漫画版「ぷちます!」を読んで面白いと思ったのが一番最初のきっかけですね。

―なるほど、「ぷちます!」の後はどのような変遷をたどってきたのでしょうか。

ぷちます!」を読んで気が付いたのが、予備知識がないとキャラクターがわからないという事。なので、従兄の部屋「ぷちます!」の隣にあった「アイドルマスター2 The world is all one!!」(以下「ざわわん」)を読んだり、曲を聴いたり、SSを読んだりしていました。自分がアニメに触れたのは結構後でしたね。既にアニメはあったんですけど、アニメをみる前に自分の中でアイマス観が固まった感じです。

―最初に触れたのが「ぷちます!」だったからこその影響みたいなものって感じますか?

たぶんあったのではないかと思います。最初に「ぷちます!」という突飛な世界に触れて、それを自分で受容できた。その上で様々なアイマス世界に触れていったので「解釈違い」が発生しにくい、これも一つの平行世界なんだなと見る感覚が身に付きました。

―というと、実在する世界が何個も並行してあって、どれも同価値である、という…

はい、例えばアイドルマスター2とアニメ版アイドルマスターって近い世界なのですが、ちょっと違うじゃないですか。「ざわわん」や「アイドルマスター2 Colorful Days」はアイドルマスター2に近い別世界です。一方、「THE IDOLM@STER(REX版)」はアニメに近い別世界なんですね。大きい世界のまとまりが公式から提示されて、それごとに各Pが作る世界が細かく分かれている。それらはそれぞれ独立していて、同価値である。というイメージをもっています。

―なるほど、生物学における分類みたいな感じですね?

まさにそんなイメージです。

―その生物の一種一種には本質的に価値の概念が存在しなくて、形態的な類似性によって分類されているという。

そうですね。公式というPが提示した一つの世界線

―メインストリームというと違うかもしれませんが…

まぁ、たぶん全体を見たら結果としてメインストリームになっている気はします。(全ての世界を)プロットしたら真ん中にいるのかな、という。

―語弊を恐れずに言えば、「それはただの公式の解釈だ」と。

それは大いにあっていいと思います。だって私はPだから。

―公式のストーリーテラーとそれぞれのPは同価値である、立場としては同位置にいるんだよ、という認識で。

そういった考え方をしていますね。

―なるほど。

 

・担当や推しについて

―では、担当や推しについて伺ってもよろしいでしょうか。

まず萩原雪歩ですね。「ぷちます!」で一番最初に出てくるぷちどるがゆきぽ、一番最後に出て来るのが雪歩と印象的だったのです。さらに「ざわわん」でで登場するユニットSprouTのうちの一人として活動していて、そのような経緯で一番気になっていたので「あー、もう担当しよう!」となったアイドルです。

そのほかの担当については、シンデレラで高森藍子相葉夕美。ユニットFloweryをよろしく。ミリオンでいうとロコ、望月杏奈、篠宮可憐。それぞれ特殊な事情があるのですが、特にロコについて最初から担当と名乗ってきました。シャニでは主に幽谷霧子を担当していますが、最近はほかのアイドルにもとても惹かれています。

推しは、美希と…あとなんでしょう、美穂とか加蓮とか?あまり自分で推しについて意識してなかったので…そんな感じですね。

―なるほど、ありがとうございます。ところで担当と推しの間に何らかの区別はありますか?

んー、まず自分の中で担当アイドルの基準は、「自分がこのアイドルの魅力を一番引き出せる」という自信があるかにあるんです。推しは、例えば作る世界観だったり、パフォーマンスだったりは好きですが自分がそれ以上を引き出せる自信がないときに名乗る使い分けをしていますね。一番いい例は星井美希で、無理。自分が担当するのは無理ですが、とても好きなんですよ。

ただ、担当以外をプロデュースしていないかと言われるとそうではなくて、私はPなので今担当として挙げたアイドル以外もプロデュースはしているんです。担当以外のアイドルも輝かせようとは頑張るのですが、他のPさんが見せるアイドル像の方が美しい。「推し」として魅せられているアイドルの姿は全て世のPさん達が呈示した姿なんです。逆に担当アイドルに関しては、私の持つアイドル像は他の誰にも負けないものであると自負しています。

―ちなみになんですが、担当や推しの共通項についてはどうでしょうか。

共通項…作りたくないですね。例えば黒髪ロングが好きと言ってしまったら、次に出会った黒髪ロングのキャラクターを好きにならなければいけない気になりますし、出会った好きなキャラクターが黒髪ロングでなかった時に、「好きじゃないのかも」と自分を疑わなければならない。自分がそうなってしまいそうで無理に探そうとしてないんです。

ただ敢えて言うならば、身長155cm、体重42㎏がちというのはあります。

―とてもピンポイントですね(笑)

なんでか…なぜかこれなんですよ(笑)

  

・発表の要約

―そろそろ本題の方入っていきますか。Lotusさんの北九州学会とOnline学会での二つの発表の要約をお願いします。

はい、二つとも自然ぷち科学というタイトルでやっているのですけど。

まず北九州学会で発表したのが「自然ぷち科学ーいおビームの定性的理解ー」です。目標としては、いおビームってそもそもどういうものなのかというのを、できるだけ科学の目線からなるべく現実的に説明して、わからないところだけをぷちどるの能力で説明しようというものでした。やり方としては、とりあえず漫画版「ぷちます!」に則って、いおがビームを撃っているコマを全て調べる。で、調べたやつから動き…例えば折れ曲がっているな、ピンク色のビームだな、物を壊しているな、というのを確認して、それが何だったら成立するかを考えたんですね。

結論として、いおは体内にカリウムとカルシウムを集積していて…カリウムは特に放射性カリウムですね。これの放射性崩壊によって発生する電子とカリウム、カルシウムの輝線…エネルギーを与えた時に出る光、これらに放射崩壊による赤外線を混ぜて放出することでピンク色で破壊力を伴うビームが発生すると考えました。

科学的に説明できない不思議なところは、普通に出しただけなら全然ビームとしての役割を持てないと思われるところです。それを集約させるというか、まとめて、時には曲げて、そういうことをするためにいおは電磁場を操っている。自分の周囲の電磁場を操ることでビームを自由自在に操っているのではないかという結論に至りました。

―では、Online学会での発表の方もお願いします。

こちらはOnlineアイマス学会でやった「自然ぷち科学―はるかさんの増殖メカニズムー」というタイトルの発表ですね。これの目的は「はるかさんなんで増えるの?」をできるだけそれらしく語ってみようというものです。これは結構難しかったですね… 

方法は先ほどのと一緒で、はるかさんが増えているところを「ぷちます!」の漫画版からひたすら抜き出してきて、特徴をつかむ。で、付随して、巨大化するであったり、暗黒化するであったりもついでに調べておいて、関連性を確認しました。自分の中で考えた結論としては、まず似ている生物...自分の体を分けて自分と似た新個体を作る生物ですね。いろいろいると思いますが、その中でいうと粘菌っぽいのではないかと思って、粘菌が増殖に用いる原形質流動などを使ってそれらしく説明できそうです。生物なので膜があるわけです、はるかさんの膜という概念を踏まえて、沢山の膜がはるかさんの表面に格納されていると仮定します。水を触媒にしてそこに酵素が働いて、体内の原形質をはるかさんの膜内に注入します。注入された膜は体内で生成されたリボンで蓋をされ、切り離されます。このように娘個体はるかさんができるのでは、と。これならぎりぎり説明がつくのではないかと考えています。私の中でも不完全燃焼ではありますが、そのように発表しました。

 

・今後の展望

―発表の今後の展望のほうに移っていきたいんですけれども。現状以上に科学で踏み込むための布石ってなにか考えられていますか?

とりあえずまだ情報が少ないので、はるかさんについてはまだまだ、例えば集団生物とか別の視点から深掘りしたいと思っています。その他ぷちどるについても全然わかっていない点があるので、とりあえず各ぷちどるの、そしてあちら側の世界線における法則を確認して、こちら側のものと変換を可能にする。そうすればぷちどるの不思議な能力が定量的に評価できて、それによって強さの比較を可能にする、というのが今後の目標というか、流れですね。

―まだまだデータ収集が続いていくと

まだ足りてないですね、全然。「ぷちます!」は続いているので、今後何が起きるかわからないという怖さもありますね。どうなるかなって感じです。

 

・犯行動機

―「ぷちます!」という不思議な世界に対して、できるだけこちらの世界の道具を用いて踏み込んでいくという姿勢の意図はどのようなものだったのでしょうか。

まず、最初に自分の中心にあったのが「最強のぷちどるは誰だ?」という疑問だったんですよ。たとえば、一対一の対戦を想定してこういう動きができるからこっちが強い、は論理性に欠けるというか、公平ではないわけですね。なので、ぷちどるのそれぞれの持っている不思議な…現実的ではない能力の出力を科学的に、というか定量的に測ることができれば、強さの数値化が可能だと。

―えー、不思議な力を函数にして、発生した現象を答えとすると、答えから函数が推定できるのではないか、という発想ですか?

どちらかというと、現実改変能力の高さは実数値になると思うんですよ。

―というと、現実からどれだけ離れたことができるか、というの仕事量のようにとらえて比較すると。

 どちらかというとスカラーポテンシャルですかね。それが定義できればどちらの力が強いと言い切れるかなと。

―それはこちらの世界ではありえない、「ぷちます!」世界に対応した新しい物理量を作るということですか…

自分の中ではそう考えています。ただ、その物理量はSI単位系の中では表せないんじゃないかと思っています。なので新しい次元というべきか、単位を一つ作ってあげればその値の大きさで評価ができるんじゃないかという風に考えています。

―これ、現実世界の道具である科学を用いて、「ぷちます!」世界を考えるということは、「ぷちます!」世界と現実世界の関わり方が関係してくると思うのですが。ここについてはどうお考えですか?

前提として、私は「ぷちます!」世界を含めてあらゆるアイドルマスターに関連する世界の存在を否定したくないんですよ。「あったら面白いじゃん」ぐらいの感覚なんですけど。否定しないものとして、なら、それは一つの現実なんですよ。現実のことは現実的に見ようぜ、っていう。そういう感覚ですかね。

 

・私的P観

―最後になりますが、あなたにとってPって何ですか?というのをお聞きしていて。Pってなんだと思いますか?

まず、お手本というと悪いですが、アイマスというコンテンツに消費者として関わっている人たち、公式が呼ぶPの定義はこれだと思うんです。で、問題は私たちは、例えばライブに参加したり、公式生放送なんかを見ているだけであちら側からPさんと呼ばれてしまうわけですよ。これってちょっと権利に対して義務が追いついてないのではないかと思ったんです。なので、私の中でのこうなってこそのPだというP概念は自分から何か新しいものをアイマスに関して創り出したとき、その人がPと呼ばれるに値すると考えています。

―本来の意味での生産者、ですね。

例えば、ちょっと言い方が悪いですけどゲームしてプロデュースした!と言っても、それは誰かが作った選択肢の上を歩いていて、それって本当にプロデュースなの?それよりも自分の心の中にいるアイドルというべきか…アイドル像と会話したほうがよっぽどPなんじゃないの?と思うんです。

―俺だったらこのアイドルはこう動かすぞ!という発想が出ること自体がまず第一歩みたいな感じですかね?

まず、その前に、というか、そもそも自分の中にいるアイドル、想像の中というか理解の中のアイドルですね。これは各Pごとに違う個体なんですよ。同じ「天海春香」を想定しても、私の中にいる春香と各Pさんたちの中にいる春香は別物ですし、別物でなければならないと思うんです。なので、もっと言ってしまえば各Pさんが自分の中にアイドルマスター世界を持つというか、世界線を各人が独立して持っている、もしくは一人につき複数持っている方もいるかもしれませんが…持っている。で、そこにいるアイドルたちを一番輝かさせられる手法で世に発信している状態、例えば絵を描くにしても、公式から与えらえた情報だけではなくて、その上で自分の中にいるアイドルを描くわけです、結局は。文章にしてもやはりそこにいるアイドルは自分の中にいるアイドルなんですよ。

だから、まずPは自分の中にアイドルマスター世界を持っていて、かつその世界の中にいる担当をはじめとするアイドル達を輝く方法で世に送り出すことができる人がPなのではないかと思っています。

アイマスのたくさんの世界線は、少なくともPさんの数だけは存在すると。それが分類されて…

まあ近かったり遠かったりはあるかもしれませんが、極論あんまり近さは関係ないのかもしれません。独立しているので。

―なるほど、たくさんの世界線が全て同価値であり、かつ実在すると考えられていると。

はい、そう思っています。

―なるほど、実在するとおっしゃっていましたが、それはアイマス世界が自己の外部に存在して、それを認識できたから、ということですか?

んー...まず、私が認識しているアイマス空間は私の中にあります。Lotusが形作る空間の中にLotusというPがいて、アイドル達が存在しています。アイドル達は私の認識を通して公式や他のPさんの発信から取り込んでいるため多少公式設定とは乖離している点もあります。それを認識してから、恐らくそれに似たものを他のPさん方も持ってるんじゃないかな、しかも人によっては複数持ってる方もいるんじゃないかな、と感じる場面に多く出会って。勿論そこにある空間は公式とも私の中の物とも違う、別の世界線が実在してるんです。

じゃあどれが本物なのよって考えると、全部本物なんです。Pの数以上にある多数のアイマス世界線を束ねた物がアイマス世界なんじゃないかな、と感じるに至りました。自己の外部にあるというよりは...アイマスを取り込んだ私がアイマス世界を構築する一部になっているというか。

―自分の中にアイマス世界線があり、アイマス世界の中に自分があると…自分の中にアイマス世界線があるならば、アイマス世界線自体がLotusさんに影響を与えることもあるのでしょうか?

ありますね。というより私がLotusという名前をアイマスでしか使っていないので、Lotusはアイマス世界にしか存在しませんし私はアイマスを全てLotusを通じて観測している感覚でいます。逆にリアルにLotusが侵食すると言いますか、例えば「この人(リアルの友人)プロデュースするならどうやろうかな」などと考えることもあります。纏めると「Lotusはアイマス世界と不可分」「最近は私の中のLotusが外側に影響を与えることも出来てきた」と言ったところです。

―リアルの人となりすらPに制約されてしまうんですね。自分はPだという確信があるように感じられますが、その源泉はどこにあるのでしょうか。

源泉というか、そもそもアイドル達からプロデューサーさんと呼ばれてそれを受け入れた時点で、もうPなんですよ。そこで確信持って自分はPだと言えないっていうのはPというロールを与えてくれた世界への裏切りというか、責任放棄な気がするんです。先ほど述べた義務っていうのはより良いPになるため努力をすることやよりアイドルを輝かせるために行動を起こすことだと思っているんですけど、Pであるということの責任はそれ以前の問題で。Pのアイドルに対して持つ権限っていうのは、それこそアイドルの人生を左右するものです。それを半ば無条件に与えてくれたアイドル達に対して「私今Pじゃないから」というのは余りにも虫が良すぎるというか、許されざることなんじゃないかなって。少なくともLotusというPは自分が作った空間に対しての責任から逃げることを許されていません。…アイマス世界をあまりにも信じすぎているというか、正直自分で見てもおかしいんですけど。自覚ある狂信者って感じなのかな?

 

・取材後記

理由あって、発表!ということで、俺たち狂人じゃねーし、理由あるし。と企画したこのインタビューですが、思ったよりやばかったですね。少なくともこの人は狂人です、狂信者か。

次回のインタビューは兎爺さんの回で、公開は【11/21】予定です!

吉と出るか、狂と出るか。

 (文責:温泉卿)

 

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狂気の弁明#0

「狂気」という最高の賛辞を送られた発表者の源泉に迫る…!!

・動機

 2019年に始まった「アイマス学会」というイベント。自らの「好き」を発表し、他人の発表する「好き」を受け入れる、そんな愛に溢れたイベントにおいて一風変わった内容を扱った発表者がいました。学問や自らの得意分野を用いてアイマスを違った視点から観察し、解明しようとする彼らは周りから「狂気」と形容されてきました。

 そんな狂気ですが、狂気と呼ばれる由縁となった発表内容にはそれぞれ大きな違いがあります。そしてその発表を生み出した発表者にもそれぞれ大きな違いがあるでしょう。そんな「違い」を探るべく始まったのがインタビュー企画「狂気の弁明」です。

・概要

  学会発表者の中でも「狂気」の称号を与えられた発表者たちに自称一般人がインタビューをしていきます。インタビュー記事は随時更新していきます。学会発表の内容や今後の展望、なぜこの発想に至ったか(通称「犯行動機」)、更にはP観やアイマス観まで狂人たちのひととなりに迫りたいと思っています。言いたいことは言い放題、訊きたいことは訊き放題な場で狂気の源泉を垣間見ていきます。

・次回予告

 次回#01は11月7日、Lotusさんのインタビューを掲載する予定です。「ぷちます!」学の創始者の素顔に迫ります。ご期待ください。

 また、#02では兎爺さんのインタビューを予定しています。そして#03では温泉卿のインタビューを掲載予定です。お楽しみに!

 さらに、#04以降に出演される「狂人」の皆さんを募集中です。狂人を知っている方、我こそは狂人という方、ぜひ一度チェズイエン工廠(@qieziyan)までご連絡をお願いします!